嘘から恋は始まらない

16 Kanna ページ16

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二人目は新田さん。
私が最初に配属された部署ですごくお世話になった。

新田さんは背が高くて仕事もできて顔も整ってて、それはそれは多くの女性から好かれるわけで。だけど本人はそんなこと気にしてないという素振りで全部かわしてた。

最初は苦手だった。
“環奈ちゃん”ってすごく名前を呼んでくるもんだから目立つ。本当は静かにひっそりとしてたかった私にとって強敵だった。関わらないで、と何回も言った。

その度に新田さんは悲しそうな顔をする。“ごめんね”と何回も謝られるのに彼は直さない。

周りの女性陣はそんな私をよく思わなかった。
入社一年目のぺーぺーが新田さんに仲良くされてるのが嫌なのは空気ですごく伝わってきた。だけどそんなの私のせいじゃない。恨むのなら新田さんを恨んで欲しかった。

女性用のトイレに呼び出されることが増えたり、仕事を押し付けられることが多くなったり。よくある典型的な悪質ないじめを受けるようになったのは入社してから半年のことだった。

幸いにも押し付けられる仕事は私にもできる簡単なものばかりで、何でこんなのも出来ないんだろうって心の中で馬鹿にしてた。私だってあの人達と何ら変わらない。どんどん心が汚くなってくのが分かって、それが一番辛かった。


そんな私に手を差し伸べてくれたのが新田さんだった。

一人で残業することが多い私にずっと声をかけてくれた。だけど私は何でもないと言ってずっと避けてた。これ以上面倒ごとは御免だと思ってたから。

ーーー手伝うよ

そう言ってシャツをまくって私の資料を半分以上持ってった新田さんに、私は大丈夫だと強がった。

一度助けてもらったらもう一人じゃ何もできなくなりそうで怖かった。帰って、と可愛くないことを言い続けたけど、新田さんは困ったように笑って私を抱きしめた。

優しく背中をさすられて私は涙が止まらなくなった。新田さんはそんな私をずっとあやしてくれた。


私へのいじめがなくなったのはそのすぐ後だった。謝られた訳じゃなかったけど私はそれがかえって楽だった。

二年目になって部署が変更になった。
新田さんとはお別れだと思った。もう関わることもないと、あの日のことは過去だからと。

だけど新田さんは私の心の中に入り込んできた。いとも簡単に。私と彼が付き合うことになったのはそのすぐ後のこと。

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