嘘から恋は始まらない

15 Kanna ページ15

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入社して配属された部署はやっぱり息苦しかった。
“可愛いね” その言葉が私にとって呪いだと誰も気づかなかった。

彼氏はいるの？とか
好きなタイプは？とか。

いくら聞いたってお前が私の彼氏になることはねーよ、
お前なんてそんなこと聞いてくる時点でタイプから程遠いわ、とか。そんなことばっかり心の中で悪態をついてばっかり。自分がどんどん醜くなるのは分かってた。

だけど止められなかった。
そんな苦しい毎日をずっと過ごしてた。

本当はもっと前から。周りの視線がやたら感じるようになったのは中学生になった時から。告白される回数がぐんと増えて、私は何もしてないのに友達が離れていくことが多くなった。

“私が〇〇君のこと好きなの知ってて心の中で笑ってたんでしょ？！”

“最っ低！”

違う。私は何もしてない。
自分の外見で自分を苦しめなきゃいけないの？誰か助けてよ。

そう何回も願って、だけど誰も助けてくれなかった。
上手に生きる術を身につけて私は自分で自分を守ることにした。もう誰にも頼らない。

そんな中、私は二人の救世主に出会った。

一人はAさん。最初の一年は部署が違ったから私が一方的に知ってた。美人ってこういう人のことを言うんだろうな、っていう素敵な人。何一つ鼻にかけず低い物腰で仕事もこなす、一瞬で私の憧れになった。

同じ部署に配属されて、Aさんに言われた“可愛いね”には悪意がなかった。これからよろしくね、と笑った顔に私は救われた。

同期3人組は私の部署でもよく話題になった。あの三人は強い絆で結ばれてる、とか、Aさんはどっちを選ぶんだ、とか。

だけど私が配属されてから見た光景は少し違った。いや、かなり違った。

Aさんは悲しそうな顔で吉沢先輩を見ることが多かった。迂闊に何も聞けなかった。いつか話してください、なんて綺麗な言葉で片付けることしかできなかった。

私はいつの日かこの素敵で大事なこの人を助けることができるのだろうか。

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