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、
「ーーー…先生っ!!」
屋上に出てすぐに先生の異変に気がついた。
眼鏡を外して縁に立つ。
目に映るもの全てがスローモーションのようで誰かの悲鳴が聞こえる。
私の悲鳴だった。
時があの頃に引き戻される。
私が死を選んだあの日。
周りの雑音とかそういったもの全てがかき消されて、
この世界には私しかいなかった。
だめ、と呟いた。
その瞬間、元に戻る。
隣の茅野さんとほぼ同時に駆け出した。
先生がゆっくりと落ちていく。
ただそれを見ているだけの人間にはなりたくなかった。
「ーーー先生…っ!!」
私と茅野さんが片方ずつ腕を掴む。
こんな時に限ってやけに手が滑る。
緊張感とかそういったもの全てが原因になって少しずつ手が離れていく感覚が強まる。
「死んじゃだめっ!!」
「…頼む。俺を、楽にさせてくれ」
あぁ、その言葉は呪いなのに。
隣の茅野さんがぼぅっとする。
あの日に引き戻されている。
景山さんが死んだあの日。
彼女は今でも手を離したことを後悔している。
先生はそれを知っていてそんなことを言っている。
「ーーー…茅野さんっ!!」
お願い、もどってきて。
そう願った時、私が掴んでいた先生の手が離れる。
もうだめ、先生が死んじゃう。
ぎゅっ、と目を瞑った時、私の両目から涙がこぼれ落ちた。
それは先生の頰に落ちた。
先生が目を見張る。
「死んじゃだめっ!!
生きてください…っ!!」
茅野さんが意識を取り戻したかのように再び先生の腕を掴む力が強まる。
「ーーー…先生、っ」
私は先生のぶら下がった片腕を掴むために手を伸ばす。必死に掴もうとしてもうまく届かない。
「先生、その手を伸ばしてっ!!」
先生は頑なにその手を伸ばそうとしない。
「死にたいの……っ?!」
私がそう叫んだ瞬間、先生の目が大きく見開かれる。どうにかして掴もうとすると、私の体が落ちそうになった。
「ーーー…、」
彼が何かを言おうとした時、後ろから声が聞こえた。
「死なせてたまるかよっ!!」
それは甲斐君だった。
彼は私の体を支えた。
そして彼は私が届かなかった先生の片腕を強く引っ張った。
後からみんなが駆けつけて先生の服や腕、掴めるところすべてを掴んで引き上げた。
先生の体が完全に屋上に戻った時、私は座り込んでしまった。
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羅水 - 完結おめでとうございます!3年A組がもっと好きになりました! (2019年4月13日 16時) (レス) id: 46509c50c0 (このIDを非表示/違反報告)
麗 - 完結おめでとうございます!! また最初から読み返そうと思います。 (2019年4月8日 17時) (レス) id: 8656a872ff (このIDを非表示/違反報告)
Hanavi(プロフ) - 失礼しました (2019年4月1日 20時) (レス) id: 5a9b3d8683 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年4月1日 19時) (レス) id: 977ff24faa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Hanavi | 作成日時:2019年4月1日 19時