誘惑王子56 ページ9
手首を抑えられたまま、右へ左へと動かしても離してくれない
...ふふ...♪...俺の顔も見てくれないんだから、やっぱりウブなのかな...?
年下と同年代には甘く優しく抱きしめて、
年上にはねだるように近づいてペースを乱していく
...行き場の無い飢えを、愛と称して毒を擦り込む
A「ねぇ、先生。...」
椚「...」
こうして貴方達を誘惑するのは、思っているより汚い、俺の欲望なんだよ
...なんて
A「...あはは、2人きりだと変になっちゃう...?
...ここ、どきどきしてるね。...どうして?」
気づきたく無かった。
椚「...っ離れなさい。...大人をからかうものではありませんよ。
...留年したくないのなら、ちゃんと出席はしておきなさい。わかりましたね」
A「...はーい...。
...!」
なんだ。つまらないや。...なんて思ったのもつかの間
「約束ですよ」、と抱き寄せられて、そのまま先生の体に見を預ける形になった
優しく頭を撫でられて、優しい声を俺にかける
...ハッと気づいた時には、先生を押し退けて
よくわからない表情のまま別れを告げて、足早に職員室を後にした
.
椚「......!...居たのなら声をかけてください」
佐賀美「いいや...。...あいつ、あんな顔するんだなあって。」
椚「...昔の方が、素直でしたよ。...あの子は」
佐賀美「可愛いことには変わりないって事だろ?...」
そんな会話があった事も知らずに、俺は教室に戻って来た
A「...」
千秋「...?なぁ、今日のAやけに元気が無さそうじゃないか?」
薫「そう?...あ、でも今朝は蓮己くんと遊んでるとこ見たんだけどな...」
泉「...何かあったのかな」
机でぼうっとして窓の景色を眺める彼に近づくと、頬杖をつく横顔の容姿の美しさが目に入る
眠たげな瞼の先の長い睫毛、
薄紅色の唇から出る吐息に、一度唾を飲み込んで話しかけた
泉「ねぇ、A。...どうしたの」
A「...うん...?...別にどうもしてないけど...急だね」
「強いて言えば眠いかな」、なんて困ったように微笑む
まぁ...いつも通りと言えばそうなのだけど、
...授業中、少し寝てるかも。と視線を窓の先に戻す仕草に、どこか寂しさを感じた
泉「...」
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作者名：朝凪世一! | 作成日時：2020年5月1日 15時
