誘惑王子63 ページ16
A「......水浴びの季節にしては寒くないかな...?って言っても、貸してあげられる上着は無くなっちゃったけどね...」
奏汰「ふふふ...♪...『うわぎ』なんていりませんよ。Aがいれば、ぼくはじゅうぶんですから」
「えい」、なんて水をかけると、諦めた様に笑う
仕返しはせずに、重くなった上着を脱いで絞って、傍に置く
どこか吹っ切れたような、普段の『王子様』のような丁寧な仕草からはみ出した”乱雑さ”
濡れた髪をかき上げる横顔を見ながら、彼のそんな変化を感じて、嬉しそうに微笑んでいた
奏汰「ちあき〜...いっしょに『みずあび』しましょう...♪」
千秋「この季節に水浴びは流石になぁ.....って、どうしたんだAまで!!?」
泉「ちょっと守沢!!!あんたのタオルこっちで......え...A...?何してんの!!?」
A「ありゃ...見つかっちゃった...」
かき上げた髪から滴り落ちる雫を、擽ったそうに笑うA
「事故だよ...」と告げるものの、目の前の二人にはそれどころではなくなっている
A「体育お疲れさま.....頑張ったね...♪」
泉「頑張ったねって....」
千秋「...い、一瞬誰かと思ったぞ?」
「ふぅん...?」と、呑気な返事をする
彼らが戸惑う理由、...それはファンが見たら全力で頷くであろうこの姿だった
白いシャツは濡れ透けてしまい、第一ボタンまで締めてあったボタンは2、3個ほど外れ、さらにはネクタイも緩めている
彼が微かに動く度、髪から溢れ落ちる水滴が肌を滑り落ちていく
かき上げた髪で顕になった顔立ちは...中性的でミステリアスなイケメン。...だったはずの素顔は、水に濡れてより美しく、色気のある男前なものだったのだ
A「泉...どこ見てるの?」
泉「べ、別に見てなっ!!?...って、目のやり場に困るから早く着替えてよねぇ!!今体操服持ってくるから!!」
奏汰「『すなお』ですね?」
A「ねー。...守沢くんも入る...?...今ならお隣空いてるよ...♪」
外見とは裏腹に、いつものおっとりした口調で手招くA
その笑顔に一歩近づくと、ぐっと手を引かれて囁かれた
A「引っかかったね?....ふふ、悪い子...♪よしよし」
千秋「!!?...か、奏汰...助けて、くれ...」
奏汰「『なさけない』ですよ、ちあき?...ゆでだこみたいでおもしろいですね...♪」
水中の悪魔(に囚われたヒーローを、タオルと体操服を持った騎士が助けに来たのだった
泉「はぁ....本当、心臓に悪い」
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作者名：朝凪世一! | 作成日時：2020年5月1日 15時
