一人目 ページ2
体育館に刻みよく響くシューズの音。
きゅっと鳴るこの音が、私はとても好きだった。
バレーは好きだ。見るのも、やるのも。ただ私の胸は少し大きいせいか飛んだり走ったりする度揺れたりするのが鬱陶しいため、高校からはバレー部のマネージャーをやると決めていたのだ。
そんなこんなで入部した青葉城西男子バレー部を支えてきて早一年目。
時が経つのは本当に早い。楽しい時ほど時の流れが早いと言うが、これは本当にそう思う。いや、医学的には脳内アドレナリンの分泌でそう感じるだけだったと証明はされているが。そんな夢の無い野暮なことは一旦置いておこう。
丁度いい気温の中、走り回る選手たちをぼーっと見ながらビブスやタオルを畳む。
そろそろ休憩入れないとな〜。そう思いよっこらせと腰をあげ、ホイッスルを咥える。息を吹き込もうとした瞬間、
「ちょっと、何してんの？」
...またこいつか〜。
「ん〜〜？何って、ホイッスル鳴らそうとしただけだけど〜」
「マジでその喋り方うざいよ？あのさあ皆頑張って練習してるのになんでそれを邪魔しようとするわけ？馬鹿なの？」
相変わらずこいつの言っていることはよくわからないな〜。
あ、この私に突っかかってきた女子生徒Bみたいな子は二年になってから男バレマネージャーになった弓元さん。
訳がわかんないけど私の存在が気に食わないみたいでよく突っかかってくる。
「うん〜？いや、ホイッスル鳴らそうとしたのは〜、皆そろそろ休憩入れないとバテちゃうな〜って思ったからで〜、別に邪魔はしてないんだけどな〜」
「嘘つくのはまだしも皆のせいにするのやめろよヒドインが。マジでその喋り方ムカつくし！何？可愛いと思ってやってんの？残念キモいから！皆そう思ってるし！」
弓元さんは言い終わったあとドヤ顔で「論破してやった」みたいな顔をしてこっちを見ている。ほとんど聞いてなかったけど。
「嘘も吐いてないし、この喋り方は癖なんだよ〜。そんなに怒らないでよ怖いなあ〜。私平和主義だからさあそんなにキャンキャン吠えないで〜？」
私が耳を塞ぎながらそう言うと弓元さんはまた顔を真っ赤にして「本当なんなの？ちょっと顔が良いからって調子乗ってんの？」と怒鳴った。
まるで好きな人を主人公にとられた当て馬女みたいなセリフだなあ。
これ以上会話を続けるのも面倒なので「私の顔が綺麗なことは自覚済みだよ〜」とひらひら手を振ってホイッスルを鳴らした。
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←設定
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：八十嶋 | 作成日時：2017年5月25日 0時
