新しい家とは。 ページ12
〜Aside〜
--------キリトリ線--------
私は中原さんに言われるが儘車に乗り込んだ。
それは見るからに高級で、黒く艶のある車体に所々光る黄金のアクセント。私と2歳しか違わない子供がこんな物を持てるのか、と呆気にとられる。
シートは柔らかい革張りで、座ると程よい柔らかさと反発が身体を包み込んだ。
確り相手を伺い乍、相手が抱く印象を作らなければ。
背筋は確りと伸ばし、床に触れるように足を置く。手は膝の上で重ね、視線は外の景色へ。
本当は景色など目に入ってはいない。
丁寧に磨かれたであろう窓の薄い反射から、隣で座っている中原さんの様子を伺う。
時々ちらちら此方へ視線は移しているものの、大して私に興味を抱いているようでは無かった。彼が此方に向ける視線には、何処か不信感が募っているように見えて、少し苛立ってしまった。
そんな雑念をとり払おうと努力している間に中原さんが声を発する。
「着いた、降りろ。」
棘のある声色だったが私は気にも留めなかった。
分かりました、と短く返事をして運転手に開けられたドアから降りる。有難う、と囁くように礼を述べると「いえ、A様」と律儀に返事を寄越してきた。私はそれに笑顔だけで答えた。
気持ちなど1つも緩んでいないというのに良く笑えるものだ。
そう自嘲し乍静かに中原さんの後を歩く。
何人もの黒服達が頭を下げていることに違和感を感じ乍、ホテルの総支配人に最上階に案内される。
「此処がA様のお部屋になります
そう言われて入った部屋は、まさに私に不相応な城ともとれよう美しい内装だった。
ソファに作業用の机にキッチンに食器棚に…何もかもが欧州を思わせる洗練されたデザインで、ローテーブルの上には豪華なティーセットが置かれていた。
内線や電話番号などあれやこれや言った後に恭しく礼をして、総支配人は戻ってしまった。
そう言って2人きりになった私と中原さん。
「却説、これからどうしましょうか」
恐る恐る声をかけると、「取り敢えず首領に渡された物確認しとけ。其の後首領に連絡をして、指示を仰げ。服でも買いに行きたいなら車出してやるから隣の部屋に来い。俺は自室に戻る。」
そう吐き終わると、中原さんは部屋を出てしまった。
余程首領の事が好きなのか、信頼しているのかは知らないが。
如何して私は其処迄嫌われているのだろうか…
思考は回っていたが、私の少ない手荷物を開けることしかやる事がないのは事実であった。
31人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Lease(プロフ) - お久しぶりです、切愛と申します。突然ですが、2年振りにアカウントを変更してリメイクをさせて頂きます。以後この内容はLeaseに引き継がれますので、どうぞ宜しくお願い致します。 (2021年10月1日 19時) (レス) id: 38aa326773 (このIDを非表示/違反報告)
切愛 - 私の端末で問題が発生しています。ログインしようとしてメールアドレスとパスワードを入力したら、その前のページに戻ってしまい、ログインが出来ません。解決方法が分からず、、しばらく投稿出来ないかも…ネタ自体はできているので…少々お待ちください。 (2020年3月31日 9時) (レス) id: a4a2215412 (このIDを非表示/違反報告)
切愛(プロフ) - ごめんなさい…投稿全然出来てません…学校休みになりましたので、今後はきちんと投稿させていただきます…どうかお見捨てならず付き合っていただけると大変光栄にございます (2020年2月29日 9時) (レス) id: 582fb3c1a0 (このIDを非表示/違反報告)
神代 雫(プロフ) - 初めまして。作品読ませていただきましたが、とても丁寧に書かれていて読みやすかったです。これからも更新楽しみにしています。頑張ってください! (2020年1月25日 11時) (レス) id: ebdbc134af (このIDを非表示/違反報告)
切愛(プロフ) - 皆様こんにちは、とうとうお話がいっぱいになりました。次の1話書け次第続編公開するので暫しお待ちを。あと更新出来なくて本当にすみませんでした!これからは更新頻度落ちないように頑張っていきます。まだまだ続きます、これからもどうかよろしくお願いします! (2020年1月14日 20時) (レス) id: 6f3c1f7dd8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:S/S x他1人 | 作成日時:2020年1月1日 20時