君と私の…… (ページ9)

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「篠田さんって、何者なんですか？」
川田さんにマッサージしてもらいながら、聞いてみる。どうも、イマイチ関係が分からない。新人さんって三上さん、言ってたけど。川田さんの態度を見てると、何か違う。

「何者、ってw 期待の大型新人、かな？」
「大型新人？」
「あいつ、あんな天然キャラだけど、アメリカと日本両方のインストラクターの資格持ってる。」
「それって凄いんですか？」
「まず、日本のインストラクターの資格を取って、実際にコーチした実績がいる。次にアメリカのインストラクター養成の為の、英語の授業を理解出来る語学力と、実務実績がいる。その他それだけの事をやりきれる努力と根性と資金がいる。」

「それって……篠田さんはそれをやりきったって事ですよね？」
「あぁ、そりゃ、年だけで言えば俺は、先輩だけどな。凄い奴だよ。自分みたいな思いをするのは自分だけで良いって」
「自分って篠田さんの事ですか？それってどういう意味ですか？」
「結弦、しのに、興味ある？」
「興味？……気になる、かな？」
なんて、ウソ。彼女の事もっと知りたい。

「ふーん、この堅物結弦にも春がきたかー？」
「なんです、春って。」
「分からなければいいよ。しの、の事知りたい？」

「教えてくれるんですか？」
もちろん知りたい。決まってるじゃん。

「俺に聞いたって言わない事。他言しない事。もちろん、しのにも。約束できる？」
「もちろん。」

川田さんと約束して、二人でマッサージ台に座り
話を聞くことにした。

長い、長い話だった。

彼女は
新体操の選手だったんだ……。

ジュニアの全日本代表に招聘されるほどの実績を持った、第一線で活躍していた選手だった。
ジュニアからシニアに上がる頃、代表落ちした。女性は体型が変わる時期だから、仕方ない事だったと、思う。

でも、彼女は監督やコーチの制止を無視して、練習を続けたある日、右足のアキレス腱を切った。
高校3年の秋、大学の推薦入学も決まっていたそうだ。医師は固定での自然治癒を進め、彼女も受け入れた。でも、推薦は取り消しになり、違う大学を一般入試で受け、入学した。

右足の怪我はギプスがとれるまで、3カ月。
歩けるようになるまで、1カ月。
練習を再開するまでにあと1カ月かかったそうだ。
そして、練習を始めて2カ月程たった頃、

右足のアキレス腱を再断裂した。
手術で再腱したけど、彼女の足は

飛ぶ事ができなくなった。