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「あぁ、三上さん。良かった…ちょっと腰やっちゃって」
羽生くん、と呼ばれた彼はほっとした口調で所長に説明した。
「ん、分かった。しの、個室に入れるよ。手ぇ貸して」
二人がかりで個室に運ぶと、マッサージ用の台にうつ伏せに寝せた。
「ちょっと腰みるよー」
上着を脱がして、Tシャツをめくり腰あたりを軽く押すと
「いっ!……」
いかにも痛そうな声をあげ
「ん〜、ここかぁー?しの、
ちょっと診てみて。」
「わ、私ですかっ?」
「お前のほうがこういうの専門でしょ?」
「でもっ、 わたしはまだっ」
「ま、いいからやりなさい」
私の戸惑いを他所に勝手に話を進める上司。私の意見は無視らしい。
「羽生くん、この子新人の篠田って言うんだけど、いろんな資格持ってて場数も踏んでるから、こいつのほうが分かると思うんだ。診させてもいいかな?」
「はい、 篠田さん?お願いします」
「……分かりました。失礼します。」
触れた時に冷たくないように、自分の手を触って確認してから背中の中程から、腰に向けて触診する。繊維の細い、しなやかな筋肉。でも、ずいぶん張ってる。これじゃあ、ちょっと違う力が入ったら痛めちゃうよね。あれ?ここかな?
「少し強く押します。ちょっと痛いかもです。ここ、ですよね」
「〜、いったっ!」
「ごめんなさい!痛かったですね。」
軽くマッサージしながら、所長を見る。
「羽生くん、いったい何したの?」
ドアの横に寄りかかり腕を組んで、私の施術を見ていた所長が彼に声をかける。
「そこで、車にぶつかりそうになっちゃって」
「は?何それ!」
「いや、横断歩道歩いてただけなんですけどね。」
「君じゃなけりゃ立派な事故だよ。もー日本の至宝に何してくれてんのって」
「至宝ってw」
「至宝でしょうが?オリンピックチャンプ? しのー?どう?」
「はい、元々張ってる所に違う強い力が加わったので、筋肉がびっくりして、締まっちゃったんだと思います。」
「んで、処置は?」
「温めながら、ゆっくりマッサージして、湿布とテーピングで様子を見て午後辺りには大分良くなると、思います。もし、変わらない時は診察してもらったほうが良いと思います。」
「合格。しの、任せていいね?」
「私より所長のほうがっ」
「何言ってんの?俺はご指名が入ってんの。どうせヒマでしょ?羽生くんのマッサージしてあげなよ。羽生くん、こいつ、こんなだけど腕は悪くないから。よろしく〜」
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鹿(プロフ) - はじめまして!ここの羽生さんが紳士で楽しく読ませてもらっています!もう少しで完結なんですか?さみしいです…。できるだけ長く読みたいので、頑張ってくださいね! (2016年10月28日 22時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:心菜 | 作成日時:2016年10月20日 8時