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料理上手なゆきさんは、作りおきのミネストローネとご飯でリゾット風おじやを作ってくれた。私の体調を気付かって、食べやすいものにしてくれたんだと思う。私は冷蔵庫に入ってた、有り合わせの野菜でサラダを作り、ご飯にした。
あんなに食べられなかったのに、ゆきさんのご飯はスルッと入る。なんか、不思議な感じ。
魔法でもかかってるのかと、思う位だ。
「ねぇ、しのちゃん。羽生くんと何かあったの?」
ゆきさんに隠し事はしたくなくて、あの日のことを話した。
話をしながら、心が溢れていくのがわかる。
私、こんなに、辛かったんだ……
「辛くて。結弦くんのこと、考えると、苦しくて、
でも、スマホのデータとか、LINEを見ると嬉しくて。
胸の奥が辛くて、辛くて……
どうしたらいいのか、わからなくて……」
子供みたいにぼろぼろ泣きながら、話をした。ゆきさんは、私の肩を優しくハグして、背中を撫でてくれた。
「しのちゃんは、本気の恋をしちゃったんだね。」
「……本気の恋……?」
「うん、人を好きになるってことは、楽しい、嬉しいことばかりじゃないの。
辛くて、苦しくて、泣いちゃうことだって、
たくさんあるの。」
そうなんだ。恋って、ふわふわで、嬉しくて楽しいものだと思ってた。
「しのちゃんは
今までずーっと前だけみて
頑張って頑張って、全力で走ってきた。
それは、あなたを見ていれば、よーく判る。
でもね、ちょっと頑張りすぎちゃって
とっても大事な事を経験しないまま
大人になっちゃった。」
「大事な事って、」
「うん、人を好きになるってこと。
男の子とお付き合いしたこと、ある?」
「ない、です。」
「じゃあ、告白されたことは?」
「……何回か。」
「お付き合いしなかったの?」
「ちょっと違うかなって。好きじゃないのに。」
「そうなんだ。しのちゃんらしいね。
でもね、人を好きになるって
大人になるためにも、大切なことなの」
「私なんか、結弦くんと釣り合わないし。」
「しのちゃん。私なんか、なんて言っちゃダメよ。しのちゃんは素敵な女の子よ?みんな、あなたの事、好きよ?」
「……」
「私の知ってる羽生くんは、
簡単に普通の女の子を、ご飯に誘ったり、
おうちまで送り届けたり、するような人じゃないわ。
彼ほどの有名人なら、いつ、どこで、写真を撮られるか、判らないもの。
全部覚悟の上で、それでも、しのちゃんと一緒にいたいって、話がしたいって
思ったんだと思うの。」
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鹿(プロフ) - はじめまして!ここの羽生さんが紳士で楽しく読ませてもらっています!もう少しで完結なんですか?さみしいです…。できるだけ長く読みたいので、頑張ってくださいね! (2016年10月28日 22時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:心菜 | 作成日時:2016年10月20日 8時