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「ママさんだけズルい。」
向かいに座った羽生さんがボソッと呟く。
「ゆづくんもAちゃんに聞いて、名前で呼んだら、良いじゃないww?」
ママさん、なんてこと言うんですかぁ?!
……彼の頭上に!マークが見えた、気がする。
「俺も名前で呼んで良い?」
ほら、やっぱり……。拒否しても、無理だよね。
仕方ない、よね。
「えっ?あー、はい。」
「じゃあ……Aちゃん、ね?俺も名前で
呼んで?」
何を言ってるのかしら、コノヒト。
「はいぃ?私も、ですか?」
「うん。」
「名前で?」
「俺も名前呼びするし、拒否権ないから。」
うわぁ〜…どうしよう。
でも、あの顔は何を言ってもダメだよね。
もうっ!
「……結弦さん。……で、良いですか?」
「うーん、ゆづくんか結弦くん、がいいなあ。別に呼び捨てでもいいけど?ついでに敬語禁止ね。」
だんだんハードルが上がってるんですけど……!私をどうしようって言うんですか〜?
テーブルの上に肘をついて、
組んだ手の上に顎を乗せて、笑顔で待ってる。それ、女子ですから!
「呼んでよ。」
「え?」
彼の笑顔が消えた。
「結弦くん、って。Aちゃんに、呼ばれたい。」
試合の時、演技が始まる直前に何度も見た、
あの目。
まさか、テーブルを挟んだ向かい側で見ることになるなんて、思っても見なかった。
「……結弦くん。」
呼び慣れてたはずの、彼の名前。
でも、違う。今は、呼べば彼に届いてしまう。
「うん、Aちゃん。うわぁ〜なんか恥っずい。高校生かって!」
両手で顔を押さえて、首を降ってる。
でも、きっと私の方が、何倍も恥ずかしい。今だって、耳まで真っ赤だ。顔から火がでそう。
ママさんのご飯は手のこんだ和食で、美味しかった、はず。
私には、ちっとも味がわからなかったけど。
向かい側で、ニコニコ笑って、美味しそうにご飯を食べている彼が羨ましい。
なんで、私だけ、こんなにドキドキして、ご飯の味もわからないほど、緊張してなくちゃいけないの?
ずっと、ずっと、
見てきた彼が目の前にいる。
それが、こんなにも、苦しい。
ううん、
嬉しくて、苦しい……
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鹿(プロフ) - はじめまして!ここの羽生さんが紳士で楽しく読ませてもらっています!もう少しで完結なんですか?さみしいです…。できるだけ長く読みたいので、頑張ってくださいね! (2016年10月28日 22時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:心菜 | 作成日時:2016年10月20日 8時