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車に乗ると、少し色の入った眼鏡をかける。案外バレないので、目は悪くないけど運転中の必須アイテム
「眼鏡掛けるんですね。」
「目は悪くないけどね。運転中にバレると、付けられる。」
「大変、ですね。」
「仕方ないよね。ほんとはほっておいて欲しいけど。」
「この車、羽生さんのなんですか?」
「事務所の。仙台にはあるけど、こっちの移動に使わせてもらってる。」
そろそろ着くよ、と言ってお店近くの駐車場に入れた。
エンジンを切ると、彼女がシートベルトを外し
車から降りようとしてる。
だ、か、ら。違うだろ?
「待って!」
強く言うと、彼女が止まった。急いでシートベルトを外して、車を降りる。助手席に周りドアを開けた。
「お手をどうそ?」
左手を車の屋根にあて、右手を差し出す。
まだ固まってるw。
「降りないの?」
「お、降り、ます。」
ぱっと頬を赤くして、恥ずかしそうに俺の手に左手をのせて車を降りた。
細くて小さな手。ぎゅっと握ったら折れてしまいそうだ。
自分でやっておいてなんだけど、これヤバい。
「ありがと、ございます。」
うん、覚えたね。お礼なんてその笑顔で十分だよ。俺がしたくて、してるんだし。
「荷物、入れといていいよ、送ってく。ダメは無しね。夜、女の子をご飯に誘っといて、一人で返すとかあり得ないから。」
「……お願いします。」
「了解」
「でも、ハンカチとかいるので。」
後ろの座席に置いてある荷物から、小さな巾着を取り出す。
「行こう。すぐそこなんだ。」
「本当に民家の中ですね。」
駐車場を出るとお店の灯りがみえる。
「ここ。」
「ほんと、近い。」
センスの良い小さな看板に『椎の実』と書かれた、知る人ぞ知るお店。閉店の札が下がってるけど、ドアを開ける。
「こんばんは。」
いつもの笑顔でママさんが迎えてくれた。
「ゆづくん、お帰りなさい」
「ただいま。今日は一人じゃないんだ。ほら、入って」
「こんばんは。」
「あらぁ。ゆづくんが我がままなんて、どうしたのかしら、と思ったらw」
「篠田さん、こちら椎の実のママさん。フィギュア界の憩いの場」
「ママさん、こちらトレーナーの篠田さん。」
「はじめまして、椎の実のママの大木です。よろしくお願いします」
「篠田です。ご迷惑かけてすみません。」
「そんな、迷惑だなんて思ったら、お断りしてます。うちはお客様を選ぶ店なのでwゆづくん、お任せね?」
「好き嫌いはない?」
「はい」
「ここは基本、お任せなんだ」
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鹿(プロフ) - はじめまして!ここの羽生さんが紳士で楽しく読ませてもらっています!もう少しで完結なんですか?さみしいです…。できるだけ長く読みたいので、頑張ってくださいね! (2016年10月28日 22時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:心菜 | 作成日時:2016年10月20日 8時