君と私の…… (ページ14)

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羽生Side

彼女を食事に誘った。
案の定、なんだかんだ理由を付けて断ろうとするけれど。
でもね？悪いけど、俺、諦めるつもりはないんだ。
16の時から大人の中にいるからね。
あざとい笑顔のひとつや、ふたつ貼り付けること位出来るようにはなってる。
それを効果的に使う方法も、よく判ってるつもり。

普段は絶対しないけど、
彼女は特別だって気付いちゃったからね。

彼女の側にいたい。
俺の側にいてほしい。

絶対、彼女を、振り向かせてみせる。

「分かりました。分かりましたから、その顔やめて下さい。」
よしっ、来たぁ！
思わず心の中でガッツポーズ。
「やった！ありがとう。俺、車で来てるから、着替えたら受付にいてね。」

急いで着替えて受付にいく。
女の子は時間ががかかるんだっけ。

いつも行くご飯屋さんに電話を入れて、貸し切りに出来るか聞いてみる。
色々配慮してくれるママさんが一人でやってる隠れ家的なお店で、フィギュア仲間はみんな常連だ。今日は誰にも会いたくないから、我がままを承知の上で頼んでみると、そろそろ閉めようかと思ってたから、構わないと言ってくれた。良かった！

「お待たせして、ごめんなさい」
白のカットソーとピンクのロングスカート。
髪を下ろして、メイクを直した彼女はジムにいるときより、更に華奢にみえる。
大きめの彼女のバッグを取り上げると、
「行こう、俺の知ってるお店だけどいい？」
ジムのドアを開けて、エスコートした。
地下の駐車場までエレベーターで下りる。

「どうそ？」
エレベーターのドアを片手で押さえ、彼女に声をかける。
「ありがとうございます。あのっ、やっぱり荷物持ちます」
もう何度目か分からないセリフを聞いて、さすがにイラっとする。

「そんなに、俺にエスコートされるのイヤ？」
「違います。そうじゃなくて、荷物重いのに」
「重いから、俺が持つんでしょ？」
「だって、私のなのに……」
「あのねぇ、俺は男なの。エスコートしてる女の子に重い荷物持たせて、連れて歩くような事出来るわけないでしょ？わかった？」
「……。」
「なんとなく居たたまれないって気持ち、解らなくはないけど、女の子はニッコリ笑ってありがとうって言えばそれでいいんだよ。」
「はい。…ありがとうございます」

少し赤くなって、ニコッと笑った彼女は
やっぱりかわいい。