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side 爆豪勝己
美潮Aが 泣いていた 。
それはとても衝撃的な事実であり
自分でも気付かなかった、というように呆気にとられながら涙を両手で拭うその姿が なぜか俺の心臓に深く突き刺さった。
その場からソイツを抱き上げて部屋まで連れて行ってやれば、すっかり涙は収まっている。
それでもどこか いつもと違う表情をしていた。
「ただね、昔からとても嫌われていたの」
その言葉とともにカーテンが風に揺れる。
ただそれだけよ、と平然と言い放った言葉とは裏腹に
まるで 苦虫を噛み潰したような顔をしていることを、自分自身で気付いていないのだろうか。
…なんて、自分に無頓着な女。
「…お前、自分が今どんな顔してんのか分かってんのか」
その言葉に またソイツの顔はくしゃりと歪んだ。
いつでも飄々としていて、ムカつくくらいにこちらを見透かす眼をした 無表情女はどこにいったのだ。
「…知らない」
クルリとこちらに背を向けるその態度は明らさま。
「ブスが更にブスになってる」
「…なってないわ」
「自覚無しかよ タチ悪ぃな」
「いつもと変わらないもの、放っておいて」
「ならこっち向けや」
くつりと笑って話しかけてやると、更に意地を張ってこちらに顔を向けない。
あの日、俺に個性を教えたコイツには もっと根を張った ″弱いところ″ があるようだ。
( それを聞かねえと テメェの言うお互い様とやらにはならねえだろうが 馬鹿女 )
「… なあ、こっち向けって」
極力キツくない声で話しかけ
背を向けるソイツの黒髪に触れた。
同じシャンプーの匂いがして 視界が揺れる。
「…だから、そんなに大した話じゃないんだって」
華奢な肩をふるふると震わせたソイツは
俺の手を掴んで、やっとこちらに眼を向けた。
「それで?」
薄っすらと涙の膜を張った瞳は 珍しくキッ、とつり上がった。
俺の手を掴むソレにも力がこもっている。
「情け、ないのよッ…」
語尾が荒くなるその声は聞いたことが無かった。
ギリギリで耐えていたその涙は
また ぽろぽろと零れ落ちている。
「君がご両親に愛されているのをみて 羨ましいと思ったなんて、思っちゃいけないのに、自分がとても惨めで、馬鹿みたい…っ、」
その言葉を言い終えるのが早いか 否か
目の前で震える猫のような女を 俺は力強く抱きしめていた。
《 酷く愛おしいと思ったものだ 》
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キリ - 美潮ちゃんの見た目聞くとアリ○ル見たいですけど似せたんですか?とっても面白いです (2018年1月7日 5時) (レス) id: e989008aff (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - アカネ先輩さん» とても嬉しいお言葉ありがとうございます!! ぜひ読みに行かせて頂きますね◎○続編になりますが、そちらで更新頑張りますのでお付き合いくだされば嬉しいです ありがとうございます! (2017年5月21日 21時) (レス) id: ca90c69f0b (このIDを非表示/違反報告)
アカネ先輩(プロフ) - めっちゃ面白い…タイトルに惹かれて一気に読みました!作者さんの書くかっちゃんがかっこいいです!私もかっちゃんと轟くんの短編書いているのでよかったらみにきてください!更新楽しみにしてます(´˘`*) (2017年5月21日 2時) (レス) id: ad572bf5b5 (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - みいるさん» すごくすごく嬉しいです!!!もっと楽しんで頂けるように頑張ります、シリアス回続きますが根気強くお付き合いください…(泣)ありがとうございます!◎○ (2017年5月19日 22時) (レス) id: e58a020c03 (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - るるるさん» ひえええ(泣)恐れ多い…ありがとうございます…頑張ります…(泣) (2017年5月19日 22時) (レス) id: e58a020c03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西垣 | 作成日時:2017年4月16日 22時