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「… あったかい」



大きな浴槽に張られたお湯に浸かりながら、艶かしいため息と一緒に言葉が自然と漏れた。

シャワーの使い方から、シャンプーやバスタオルの場所まで優しく教えてくれたお父様はとてもお風呂好きらしく
浴槽は檜で作ったのだと、そのこだわりを熱弁してくれた。

それを思い出して 木の良い香りを堪能しながら冷えた身体を温める。




それも ものの数分で終わらせ
濡れたまま二番風呂を待っているであろう爆豪くんのために、サッサと脱衣所へと出た。




「…ああ、服はどうしよう」

身体の水気を拭きながら はたと考えつく。

脱いで置いていたはずの濡れた制服は
すでに洗濯に回してくれているようで、着替えと呼べるものが無かった。



鏡に写る自分の紅い髪がだんだんと黒くなる様を見ながら、どうしたものかと考えを巡らせていたその時

コンコン と扉が叩かれる。



「替えの服 ここに置いてるから使え」

聞き慣れた彼の声が扉越しに聞こえて
命令的な言葉とは違い 扉をたたく音は優しいものだなとすこし頬を緩めた。


彼の足音が遠くなるのを確認してから
そろりと扉を開き、用意してくれたその服を身につける。




「…あまい」


彼の個性柄、ニトロの甘い香りを纏っているらしいが
洗いたてであろうその服は

お日様の香りと彼の甘い香りが混ざって、心地よく私の鼻腔をくすぐる。
頬を綻ばせたところでハッと我に帰り
用意してくれた服にサッサと着替えて脱衣所を出た。




( 今の私、かなり変態チックだったな )


人の服を嗅いでニヤけるなんて気持ち悪いぞ、自分。


そう考えながらぺたぺたと足音を立てて廊下を歩く。
すると、脱いだシャツを片手に 上半身裸の爆豪くんとばったり会ってしまった。


「爆豪くん お風呂先に借りてすまな、」

「髪の色 戻ってんな」

「え、ああ…そうだね」


とにかくお礼を言っておこうとしたのだが
その言葉は、私の髪に指を絡める彼の声に遮られる。

黒く戻った髪色はやはりどこか落ち着く。



紅も綺麗だと言ってくれた彼は
私の髪から足の先まで じろじろと確認するように視線をやっていた。

その様はどこか緊張感を携える。






「…ふ、その格好いいな」




その格好、とはなんだか分からないけれど。


彼は とても満足そうに口角を上げ
私の髪をぐしゃりと撫でてからお風呂場へと向かった。


…… 何をお気に召したのだろうか。




《 少女は自分の姿に無頓着 》

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キリ - 美潮ちゃんの見た目聞くとアリ○ル見たいですけど似せたんですか?とっても面白いです (2018年1月7日 5時) (レス) id: e989008aff (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - アカネ先輩さん» とても嬉しいお言葉ありがとうございます!! ぜひ読みに行かせて頂きますね◎○続編になりますが、そちらで更新頑張りますのでお付き合いくだされば嬉しいです ありがとうございます! (2017年5月21日 21時) (レス) id: ca90c69f0b (このIDを非表示/違反報告)
アカネ先輩(プロフ) - めっちゃ面白い…タイトルに惹かれて一気に読みました!作者さんの書くかっちゃんがかっこいいです!私もかっちゃんと轟くんの短編書いているのでよかったらみにきてください!更新楽しみにしてます(´˘`*) (2017年5月21日 2時) (レス) id: ad572bf5b5 (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - みいるさん» すごくすごく嬉しいです!!!もっと楽しんで頂けるように頑張ります、シリアス回続きますが根気強くお付き合いください…(泣)ありがとうございます!◎○ (2017年5月19日 22時) (レス) id: e58a020c03 (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - るるるさん» ひえええ(泣)恐れ多い…ありがとうございます…頑張ります…(泣) (2017年5月19日 22時) (レス) id: e58a020c03 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:西垣 | 作成日時:2017年4月16日 22時

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