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他愛も無い日常を過ごしていた私の心は、とても穏やかに凪いでいた。
クラスメイトとも良い友好関係を築いているし
個性 を使う授業の憂鬱さは、爆豪くんが殆ど隣にいてくれるおかげでかなり少ない。
登下校のみを共にしていることに最初は周りも不思議な目をしていたが、今では周知の事実のようだ。
よく考えれば、私の隣には彼がいることが多いなあ なんて
「…爆豪くん、おそいなあ」
夕日が雲に隠されている街の中
校門を出たところの外壁にもたれかかり、膝を抱えながら考えていた。
「用事がある、すぐ済ますから外で待ってろ」
それだけを言って教室を出た彼にこくりと頷いたのは もう1時間ほど前の事だ。
どんよりと重い灰色の雲が空を覆い始め、今にも雨が降ってきそうなソレを見上げた。
( 何をしているんだろう。
もしかしたら入れ違いになったのだろうか )
1つしか無い門の前で待っているのだからそれはあり得ない筈だけど。
「…先に、帰ろうかな」
怒られれば適当に謝ればいいか、と呑気に考え
膝にぐっと力を込めて立ち上がった。
俯いたまま立ち上がった瞬間
首筋にぽつりと1つ 雨粒が伝って その冷たさに肩をすくめつつ顔を上げる。
1番に目に入ったのは どんよりした雲ではなく
蜂蜜色のツンツンとしたソレだった。
「…わあ、爆豪くんだ」
ゼェ ハアと肩で息をする彼は
額の汗をぐいと拭い、逆の手で私の額をピンと弾いた。
「なに先に帰ろうとしてんだコラ」
ぱたぱた と首元のシャツをはためかせながら熱を逃がしているその姿から、ここまで走ってきた事が分かる。
どこで何をしていたのかは知らないけれど。
「これでも1時間は待ったよ」
「俺が待てっつったら一生でも待っとけや」
「…なんて理不尽なの」
「うっせーブス」
ぽつり 、 ぽつり 。
生産性の無い言い合いをしているその間にも
空から落ちてくる大きな雨粒は 私たちを濡らす。
「ねえ、私 傘は持っていないわ」
手にしていた学生鞄を頭の上に掲げながら彼を見るが、彼が持っている筈も無く。
そうこうしている間にも雨脚は強まった。
ついには ザアザアと音を立てる本降りになり始めた。
「チッ、とりあえず屋根あるとこまで走んぞブス」
「え、ちょっと 置いていくなんて酷いわ」
仄暗い商店街へ続く道を 2人は駆けた。
雨が それを追いかけた。
《 濡れてしまえと囁くように 》
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キリ - 美潮ちゃんの見た目聞くとアリ○ル見たいですけど似せたんですか?とっても面白いです (2018年1月7日 5時) (レス) id: e989008aff (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - アカネ先輩さん» とても嬉しいお言葉ありがとうございます!! ぜひ読みに行かせて頂きますね◎○続編になりますが、そちらで更新頑張りますのでお付き合いくだされば嬉しいです ありがとうございます! (2017年5月21日 21時) (レス) id: ca90c69f0b (このIDを非表示/違反報告)
アカネ先輩(プロフ) - めっちゃ面白い…タイトルに惹かれて一気に読みました!作者さんの書くかっちゃんがかっこいいです!私もかっちゃんと轟くんの短編書いているのでよかったらみにきてください!更新楽しみにしてます(´˘`*) (2017年5月21日 2時) (レス) id: ad572bf5b5 (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - みいるさん» すごくすごく嬉しいです!!!もっと楽しんで頂けるように頑張ります、シリアス回続きますが根気強くお付き合いください…(泣)ありがとうございます!◎○ (2017年5月19日 22時) (レス) id: e58a020c03 (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - るるるさん» ひえええ(泣)恐れ多い…ありがとうございます…頑張ります…(泣) (2017年5月19日 22時) (レス) id: e58a020c03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西垣 | 作成日時:2017年4月16日 22時