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紅く染まった街並みに 長く伸びる影が2つ。

絶妙な距離感を保ちながら歩を進める2人の間には
会話というよりも ひとり言のようなものがぽつぽつと存在するだけであった。


そこに気まずさは無く
ただただ 心地良い静けさだなぁと感じていた。



「なぁ」


ふ と声をかけられて視線を上げる。



「海、寄ってくか」


私よりも高い位置にある彼の視線はこちらに向く事もなく
すぐそこにある 広い広い海に向けられていた。

影になっていてその表情はわからなかったけど
どこか 優しい声に聞こえた。



だから私は 二つ返事で頷いたのだ。






.






「わぁ… 夕方にここに来るの 初めてなの」



夕日に反射してキラキラと紅く染まる海。

朝とは違う顔をみせている広大で美しい友達を見て
気分が昂ぶるままに靴を脱ぎ捨てる。


それを見ながら彼は呆れたように喉を鳴らして笑い
「おー、行ってこい行ってこい」 とヒラリと手を降りながら 砂浜に腰を下ろした。

″ 待て ″ を解かれた忠犬のように 私はそれを合図に海へと駆ける。



指が掴んで蹴る砂浜は 朝よりも温かい気がした。







ザバン、ザバン




お昼の気温の高さによってぬるく温められた水が 嬉しそうに足に絡まりつく。



「私も 貴方に会えて嬉しいわ」

微笑んでやれば 海は嬉しそうに波を起こし、私の頬を優しく撫でた。

端から見れば気味の悪い、自然の原理に反した動きだろう。




「それ、お前が動かしてんのか」

浜辺にいる彼が
立てた膝に頬をつきながらそう尋ねた。



「いいえ違うわ」

すこし大きな声で言葉を届ける。



「この子が自分の意思で好きなように動いてるだけよ」


友達だから分かるの、と言葉を続け
足元に広がる水を両手で高く掬い上げてやる。

それを見ていた爆豪くんは
小さく呆気にとられながらも喉を鳴らして くつりと笑った。




夕日に染まる砂浜という場所で
普段に無く 穏やかに笑う彼はとても絵になった。

彼の綺麗に整った顔立ちを 今更ながらに理解した。




「…爆豪くんは、なんで 此処に来たの」


思考を変える為に飛び出しただけの適当な疑問。

それに一瞬 ハテナを浮かべた彼は、形のいい唇で答えを紡ぎ出した。




「お前が笑うから」



さも、当たり前のように。
当然だろ、とでも言うように。

彼の表情は夕日が影を作り 見ることはできなかった。




《 心臓が熱い何かに握り潰された 》

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キリ - 美潮ちゃんの見た目聞くとアリ○ル見たいですけど似せたんですか?とっても面白いです (2018年1月7日 5時) (レス) id: e989008aff (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - アカネ先輩さん» とても嬉しいお言葉ありがとうございます!! ぜひ読みに行かせて頂きますね◎○続編になりますが、そちらで更新頑張りますのでお付き合いくだされば嬉しいです ありがとうございます! (2017年5月21日 21時) (レス) id: ca90c69f0b (このIDを非表示/違反報告)
アカネ先輩(プロフ) - めっちゃ面白い…タイトルに惹かれて一気に読みました!作者さんの書くかっちゃんがかっこいいです!私もかっちゃんと轟くんの短編書いているのでよかったらみにきてください!更新楽しみにしてます(´˘`*) (2017年5月21日 2時) (レス) id: ad572bf5b5 (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - みいるさん» すごくすごく嬉しいです!!!もっと楽しんで頂けるように頑張ります、シリアス回続きますが根気強くお付き合いください…(泣)ありがとうございます!◎○ (2017年5月19日 22時) (レス) id: e58a020c03 (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - るるるさん» ひえええ(泣)恐れ多い…ありがとうございます…頑張ります…(泣) (2017年5月19日 22時) (レス) id: e58a020c03 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:西垣 | 作成日時:2017年4月16日 22時

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