サカナは空を見上げた 【爆豪勝己】

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「授業を始める前に、だ。
まずは はじめまして、美潮少女！！」



私の耳に雄々とした声が響いて すこしの感動を覚える。


目の前に立つその人は
律儀にも目線を合わせるように、その巨躯をかがめて手を差し出した。

成人男性よりもさらに大きく厚いその手を握り返し
「はじめまして、オールマイトさん」と無愛想ながらも挨拶を交わす。

彼から “ これから ” に対して一言 二言の激励を告げられ それから、待たせていたクラスメイトへ向きを直してやっと授業は始まった。






.






「今日の授業は2対2の戦闘訓練！くじ引きにてヒーロー側と敵側に分かれてもらう。
勝敗はいま君達が腕に付けた端末を壊すかことで決まる！
分かったかな！？」







オールマイトの説明を聞きながら、用意されたくじを各自で順々に引いていく。

先ほど配られた携帯型の端末を、これまた配られたばかりの専用ケースに入れて二の腕のあたりに付ける。
これを壊すのか、なんてルールを確認しながら。





「Aちゃん」


1人でいた私を ケロケロと可愛い鳴き声を零しながら呼んだのは、確か



「…蛙吹 さん？」

「梅雨ちゃんと呼んで、くじの方はどうだった？」


一瞥しただけのソレにもう一度目を通し
ヒーロー側のC組みたい、と。

彼女に、伝えたのだ。







「なんだ お前がペアか」


なのに、返ってきたのは可愛らしい声ではなく、むしろ目の前からでも無かった。

背後から ぬ、と現れた彼は
くじを盗み見るように 私の肩に顎を乗せて顔を見せた。


「足を引っ張らないよう尽力するよ」



そっと身体を離してサファイアの瞳と向き合う。

隣にいた彼女、梅雨ちゃんは 作戦会議の邪魔になるわね、とまたケロケロと鳴いてどこかへ行ってしまった。




「私たちの相手は誰？」

「…爆豪と切島だ」

「…… へえ、敵意剥き出しだ」



ス、と焦凍くんが指差した場所にいた爆豪くんは こちらを見て無言のまま何度も爆破を起こしている。

私は感情の込もらない声で こわいこわいと呟いた。



「俺たちが1戦目らしい、少し話すぞ」


彼が お前の個性を教えろ、と切り出したのでお互いに力を見せ合い作戦を立てる。





「それでは1戦目のペア以外はモニタールームに移動しようか！」



遠くで英雄の声が響いて
私と焦凍くんは クラスメイトとは逆に演習場へ向かう。
　
無表情ながら ワクワクと子供のような気持ちを胸に隠していた。





　

《 これでも英雄の端くれですので 》

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