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「… さあ ?」
抱きとめられたまま 彼の顔はほんの数十センチ先にある。
残念ながら私は人の顔を覚えるのが苦手なのだ。
どこかで会ったことがあるかと聞かれても分かりやしない。
「そうか」
曖昧な返事に納得したその言葉とは一致せず
彼は私との距離をさらにグッと縮めた。
…なんだか顔がとても近い気がする。
「…お前、綺麗な眼してるな」
「それはどうも…?」
首を傾げながらもお礼を言って
グイ、と胸を押しながら彼の腕を抜け出した。
「じゃあ、失礼します」
これ以上話を続ける必要もなく
軽くお辞儀をしてから、彼の横を過ぎようとした。
した、のだが。
「どこ行くんだ?」
がしり、と私の右手は彼に掴まれて動く事ができず。
「…雄英高校、だけれど」
「ならそっちは全くの逆方向だが 」
彼の指差す方へ私も振り返ってみると、大きな校舎はここからでもしっかり見えていた。
…ああ、昨日に引き続き遅刻してしまうところだった。
危ない 危ない。
「私は自分が思ってるより方向音痴なようだ」
「みたいだな」
「… もう手を離してはくれないか?」
踵を返して進もうとするのだが 彼に掴まれた右手はまだそのままで、離せと言うと更に強く握られた気がした。
彼はそのまま私のその手を引いて歩き出す。
「同じ方向なら一緒に行けばいいだろ」
とだけ言った理由はなんてシンプルで明快。
「まあ、確かに」
そう答えた私もシンプルで単純。
「俺は轟 焦凍だ、お前は?」
「美潮 A」
名前まで綺麗だな、なんて口説き文句が聞こえた気がしたけれど
その割に彼の表情は全く動いていないから
それは気のせいなのだ、と思って話を続けた。
「トドロキくん、って舌が絡まっちゃいそう」
「なら名前で呼べばいいだろ」
「そうするよ」
ほかほかと温かい彼の左手と繋がれたまま、どんどんと近付いてくる立派な門をくぐった。
あんなに余裕のあった時間は既に残り少なくて
広い校舎内を少し駆け足気味に、自分の教室に向かう。
「焦凍くん」
「A」
声が重なって 彼も同時に1-A の教室の前で足を止めた。
…ええ、あれ、嘘でしょう?
「…ああそうだ、お前 昨日の転校生か」
思い出した、と1人で納得したように私の顔を見た焦凍くんは少しだけ笑って 扉に手をかけた。
もちろん 逆の手は私を包んだまま。
《 爆破音が聞こえる5秒前 》
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キリ - 美潮ちゃんの見た目聞くとアリ○ル見たいですけど似せたんですか?とっても面白いです (2018年1月7日 5時) (レス) id: e989008aff (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - アカネ先輩さん» とても嬉しいお言葉ありがとうございます!! ぜひ読みに行かせて頂きますね◎○続編になりますが、そちらで更新頑張りますのでお付き合いくだされば嬉しいです ありがとうございます! (2017年5月21日 21時) (レス) id: ca90c69f0b (このIDを非表示/違反報告)
アカネ先輩(プロフ) - めっちゃ面白い…タイトルに惹かれて一気に読みました!作者さんの書くかっちゃんがかっこいいです!私もかっちゃんと轟くんの短編書いているのでよかったらみにきてください!更新楽しみにしてます(´˘`*) (2017年5月21日 2時) (レス) id: ad572bf5b5 (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - みいるさん» すごくすごく嬉しいです!!!もっと楽しんで頂けるように頑張ります、シリアス回続きますが根気強くお付き合いください…(泣)ありがとうございます!◎○ (2017年5月19日 22時) (レス) id: e58a020c03 (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - るるるさん» ひえええ(泣)恐れ多い…ありがとうございます…頑張ります…(泣) (2017年5月19日 22時) (レス) id: e58a020c03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西垣 | 作成日時:2017年4月16日 22時