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陸へとあがった私の脚には チクチクとした痛みが残っていた。
童話の人魚姫さながら
人間のものへと姿を戻したとき、私の脚は私のものじゃないような痛みが走るのだ。
数分で治るのだが これがまた慣れない。
「い、たた」
ひょこひょこ と歩きながら脱ぎ捨てた服を探す。
今の私の姿は生まれたままの格好。
この海には滅多に人が通らないし、恥ずかしさという感性が私はどうやら欠落しているようで分からないのだが 倫理的にはかなりアウトなんだろう。
彼の言っていた 痴女 という言葉は否定したいが。
「…あぁ」
そんなことを考えながら視線の先にある物を見て、小さく声を零した。
「…ふ、変なの」
脱ぎ捨てていたはずの服や装飾品はキチンと畳まれて
岩陰に置かれている。
( 下着だけは移動させられていなかったが )
その近くの砂へと雑に書かれた ″アホ″ という字が、なんとも可笑しくて。
クスリと笑いながらそれに手を伸ばして身に纏う。
彼が触れたその服は なんだか甘い香りがして、脚の痛みはすっかり無くなってしまった。
.
.
現在 午前7:20
学校へ向かうにはまだすこし早い時刻。
昨日覚えたばかりのその道を
ぼー、としながら歩く私の歩みは遅く 野良猫にすら抜かされていく。
確か 次の角を右に曲がって住宅街を抜けて、左に見える坂を下ったら学校に着くはずだ。
まだまだ時間に余裕はあるな、と
昨日の記憶を反芻しながらのんびりと歩く。
「ふ、あぁ…」
大口を開けてあくびをしながら 角を曲がった。
その時
「んわっ、ぷ」
ドンッ と何かにぶつかった。
嘘でしょう行き止まり?
曲がり角に見せかけといて すぐ目の前に壁があるなんて酷いじゃない、なんて考えながら目を開ける。
「悪い、怪我してねえか」
「……いいえ 君こそ」
そこにあるのは壁なんかではなく
目の前に立つその男の子のしっかりとした胸板で。
前を見ずにぶつかった私は 肩を後ろから抱きとめられる形でその場にいた。
「… お前、どこかで会ったことあったか」
赤と白のコントラストが映える髪、痛々しい火傷跡の中に秘めるようにして、サファイア色の瞳を携えた少年だった。
《 言うなれば夜空のような 》
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キリ - 美潮ちゃんの見た目聞くとアリ○ル見たいですけど似せたんですか?とっても面白いです (2018年1月7日 5時) (レス) id: e989008aff (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - アカネ先輩さん» とても嬉しいお言葉ありがとうございます!! ぜひ読みに行かせて頂きますね◎○続編になりますが、そちらで更新頑張りますのでお付き合いくだされば嬉しいです ありがとうございます! (2017年5月21日 21時) (レス) id: ca90c69f0b (このIDを非表示/違反報告)
アカネ先輩(プロフ) - めっちゃ面白い…タイトルに惹かれて一気に読みました!作者さんの書くかっちゃんがかっこいいです!私もかっちゃんと轟くんの短編書いているのでよかったらみにきてください!更新楽しみにしてます(´˘`*) (2017年5月21日 2時) (レス) id: ad572bf5b5 (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - みいるさん» すごくすごく嬉しいです!!!もっと楽しんで頂けるように頑張ります、シリアス回続きますが根気強くお付き合いください…(泣)ありがとうございます!◎○ (2017年5月19日 22時) (レス) id: e58a020c03 (このIDを非表示/違反報告)
西垣(プロフ) - るるるさん» ひえええ(泣)恐れ多い…ありがとうございます…頑張ります…(泣) (2017年5月19日 22時) (レス) id: e58a020c03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西垣 | 作成日時:2017年4月16日 22時