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【まどろみの夢】後編 End ページ42










“そんな強欲な君に、力をあげよう”









そんな声が、聞こえた。
その瞬間、俺の視界は真っ暗になり、
意識が遠くなっていった。

今にして思えばあの声こそが、邪神の声だったんだろう。
長谷部を連れて行かれ………主も仲間も本丸も失った俺は。
せめて、戦友であったあいつだけは………と。


奈落に身を………投げた。









─────────────────────










『切国、さ………』








………夢見ていた世界が、崩壊していく。
これと似たようなモノを、見たことがあった気がした。

Aが俺を見て、不安そうな顔をしている。










切国「………ただ、一人の主を………俺は結局守れなかった。
どれほど自分を鍛えようが、どれほど強くなろうが、
がむしゃらになって、息が詰まるほど戦って、
血を浴びて…………また力を求めて。失敗したんだ」








嗚呼。思い出した。
俺が失敗した記憶。長谷部に背負わせていた記憶。
何故俺が記憶を保てなかったのか。

そう。代償を支払ってでも。
守りたかった物があったから。







切国「俺は、強欲だったんだ。
力を求めて………全てを守れる程に強くなりたかった。
でも失敗して、全てを失って………

ハッ……笑えるな。初期刀が、情けない。
ついにはこんな幻覚まで………
随分と、俺は弱くなった」



『ごめ、んな、さい………ごめ、ん………私………っ』



切国「いや………いい。あんたは悪くない。
俺の弱さが招いたんだ。謝るな」









夢だったと自覚したからか、
次々へと俺が作り出した本丸………
この空間がボロボロと崩壊し、
雪のような光る結晶が降り注いでくる。


冬矢と同じく、優しいあんたは、
俺を思い、その涙を流してくれた。

泣けない俺の為に、泣いてくれた。










切国「済んだ話だ。全て………過去の話」

『ッ………、』

切国「起こしてくれたこと、感謝する。ありがとう」

『う、っ………ぅ、』

切国「帰ろう。赤神本丸に」










泣きじゃくるあんたは、理解出来る人間なのだろう。
失い、悲しみ………そうやって誰かの為に涙する。

人間は、本当に…………





………本当に。










それでも涙するあんたを、
俺は抱き締めることしかできない。

強さを求めていた俺は………
涙を止める方法を、知らないから。



………すまない。






山姥切side〜end〜

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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2021年11月23日 20時

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