617pager ページ33
・
切国「主、主っ!落ち着けっ!!」
冬矢「皆っ、きえ、消えないでっ!!
やだよ、嫌だぁ!!」
感情が膨れ上がるのと同時に、
主の力は暴走していった。
徐々に消えていく仲間達。
泣き叫ぶ主の声。
主の力が一気に放出して行けば、
仲間達の力を奪って行った。
長谷「主っ、いけません!お気を確かに!!」
冬矢「来ないで、来ないでっ!!
お願い、長谷部!!僕を殺して殺してっ」
その暴走を止めたのは一振り目の長谷部だった。
俺も勿論止めに入ろうとしたが、
長谷部に止められてしまった。
長谷「主は俺が止める。主の霊力は今、
一斉に解き放っている状態だ。
蓋をしなければならない。
お前は初期刀だろう。お前まで消えては、
主は本当に壊れてしまう」
切国「だが、近づけばあんたまで消えるぞ!」
長谷「俺は主の物だ。
消えたとしても、主を救えるなら本望。
山姥切、お前はここに居なければいけない。
頼めるのは、お前だけだ。
俺はお前を信用している。後を頼む」
そう言って、長谷部は自分の身が消える代わりに、
主をその身をもって鎮めてみせた。
俺はただ、見ている事しか出来なかった。
俺は長谷部のようにはなれなかった。
長谷部は、俺なんかよりもずっと、強い奴だった。
自分の事で精一杯だったのに、
あいつは………
…………俺は、長谷部が羨ましかった。
───────────────
その日から、主は一切部屋から出て来なくなった。
俺が中に入ろうとしても、
主はそれを拒んで結界まで張る始末だ。
壁越しの会話。
本丸にはもう、俺以外の刀剣は居ない。
二人で過ごすにはあまりにも静かで、広すぎる。
切国「主………」
声をかけても、いつも聞こえてくるのは
主の泣く声だった。
啜り泣く声が止む日が無かった時もあった程だ。
何故、俺だけが消えなかったのか未だに謎。
初期刀であったからか、錬度が他の刀剣より
少し上だったからか…………
今となっては分からず終い。
ただ………分かるのは、
今の主を支える事が出来るのは、
“俺しか居ない”と言う事だった。
181人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2021年11月23日 20時