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声の主がそう言い終えると、
ふわりと何か光るものが降ってきた。

夢幻本丸にあった、あの鳥の羽根だ。
私は反射的にそれに触れる。
すると淡く光り出して、その羽根はやがて人の形を成した。
体はやはり少し透けてはいるが、
初めて近い距離で見た。








姫鶴《上杉家御手選三十五腰のひとつ。
姫鶴一文字。よろしく、新たな主》


『姫鶴、一文、字………(一文字派の、刀剣かな)』


姫鶴《それで?誰の夢に行くだって?》

『え、と………山姥切国広。赤神本丸の』

姫鶴《ふぅん。じゃあ案内、したげる》

『えっ、分かるの?』


姫鶴《君の寝てる体と、その山姥切国広?の体が
近くで寝てるなら、そー遠くないし。
ほら、あっちから気配がする》










彼がそう告げて、早速とある方角を指差す。
そこから光が漏れ出していて、
あそこが切国さんの夢の中なのだと、姫鶴は言った。

私はその案内通りに、光へと飛び込んだ。





─────────────────────








『………!ここ、は……本丸?』








気がついたら、私は本丸の正門前に居た。
自身の本丸に帰ったのかと一瞬戸惑ったが、
その本丸の正門の空気とか、雰囲気が異なる事に気づき、
本丸の表札を見てみる。

そこには【冬矢本丸】と書かれていた。










『“冬矢本丸”って………(長谷部と切国さんの……)』

姫鶴《知ってる?》


『長谷部さんが教えてくれた。切国さんと長谷部の、
前いた本丸の名前が“冬矢”って』


姫鶴《へー。ちなみに俺、
ここの人達には見えてないから》


『………え、』

姫鶴《人が来た。じゃあ、頑張って》

『えっ、ちょ………姫鶴っ』










??《どちら様?》


『!』










姫鶴がそそくさと姿を消した瞬間、
背後から声をかけられた。
振り返ると、そこに居たのは“信濃藤四郎”
でも私が知っている信濃じゃない。

その信濃は私をニコニコした表情で、
人懐っこく声をかけてくれたが、目の奥には疑うような、
少し警戒するような感情が垣間見えているのがわかる。








『し、なの………』








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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2021年11月23日 20時

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