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暗い。
最初に見たのは、どこまでも暗い場所だった。
そう、闇………光がない場所。
その中を私は落ちているのか、歩いているのか、
登っているのか、走っているのかも分からないまま、
そこに居た。
『(そして、さっきから聞こえるこの声………
天探女の神？悪夢へと誘う気か)』
いつもその声がして、私はいつもそれに怯えていた。
寝れない日もあった。
もはや聞き慣れたと感じるその神の声。
でも今の私には効かない。
これは夢であると自覚出来ているから。
『(邪魔を、しないで。切国さんの夢へと
続く道を探さないといけないのに)』
聞こえる怨嗟、憎悪の言葉を無視して、闇の中を私は進む。
いや、進んでいるのか分からないが………
それでも私は進もうともがく。
──“だから駄目だって言ったのに”──
その時、そんな声がした。
辺りを見渡すけど、声の主の姿は見えない。
でもこの声は………夢幻本丸に居た、あの………
──“今度は何する気?”──
──“折角、夢から覚めたのに”──
『………帰れなくなった刀剣がいるの。
迎えに行かないといけない。
貴方はどうしてここに居るの？
夢幻本丸にいたんじゃなかったの？』
──“俺は、本体を失った存在”──
──“意識だけ夢に閉じ込められた”──
──“だから誰も俺を認識出来ない”──
──“帰れないんだ”──
『………そ、う。あの、急な話をするけど、
貴方は夢に関して詳しい？』
私がそう問うと、その声の主は暫くの沈黙の後で応える。
──“逸話の事もあるし、多少は”──
『なら、手伝ってほしい。
さっきも言ったけど、私はとある刀剣男士を
夢から覚まさなければならない。
彼はまだ本丸に必要なの。皆待ってる』
私は何としてでも彼を連れ戻さなければならない。
チャンスは一度きり。赤神さんも言っていた。
だからこの声の主に頼んでみよう。
夢に関して詳しいのなら頼もしい。
──“……ん。いいよ”──
──“君と居たほうが楽しそだし”──
──“その代わり、俺も現世に連れて行って”──
──“君の力で、失った俺の体と本体”──
──“鍛刀して、顕現してくれたら”──
──“君に応えてあげる”──
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2021年11月23日 20時
