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冬矢様はそう言って、苦笑なさっていた。
今は少し距離のある場所での会話だが、
その話は本当なのだろうと思った。
満ち溢れる霊力………それを常に放出している状態。
だからか主の顔はあまり良くない。
嗚呼、彼は“長くないのだ”とも悟った。
暗い、誰もいないこの離れの蔵の中で、
寂しい思いをしているのではないか。
大人びている主ではあるが、まだ幼い。
寂しくは無いんだろうか。
冬矢「………前の君は、
暴走してしまった僕の力を止めてくれたんだ。
代わりに君は折れてしまった。
だから、中々君を顕現してあげれなかった。
割り切れなくて、申し訳なくて。
でも………君と前の君とは違うって分かってでも、
本当は僕は君に会いたかった。
だから、君を薊さんと顕現したんだ。
ごめんね。こんな、身勝手な審神者で」
長谷「主………」
冬矢「………今日はここまでにしよう。
まんば、彼を連れてきてありがとう。
でも悪いけど………もう……」
切国「分かった」
長谷「主っ!」
冬矢「?」
俺は去り際に、主に声をかけた。
幼い主の体にのしかかるものは、
あまりにも重すぎる。
俺は冬矢様と薊様に顕現された刀。
仕える身を得た今、俺は………
彼の力になりたいと、
話を聞いてその思いが強くなった。
俺達を思い、自ら独りになろうとする主。
俺は………
長谷「明日もまた、
こちらに伺っても宜しいですか?」
冬矢「ぇ、」
長谷「近づくのが恐ろしいと思うなら、
窓越しでも構いません。
毎日伺います。会いに来ます。
ですから、その許可をください」
冬矢「ッ…………だ、駄目だよ……
僕は、誰とも会う気は無いんだ………
傷つけたくない………僕に構わなくていいんだよ?
好きに、過ごしてもらえれば……それで」
長谷「………好きに過ごして良いと仰るならば、
毎日伺っても良い、と解釈します」
冬矢「は、えぇっ!?」
長谷「俺は薊様と冬矢様の物です。
外へ出れないなら俺が貴方の
目となり足となりましょう。
俺をどうか、使ってください」
冬矢様は優しいお方何だろう。
俺達を思ってくださっていると、
そう分かっただけでも、俺は嬉しかった。
だから、彼の物として努めを果たしたい。
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2021年11月23日 20時