◇ ページ3
豊前side
また、この夢だ。
俺は目覚める。寝起きは最悪だ。
朝起きるときに確認するのは、眠っていた場所が、
ちゃんと俺の部屋であるか、だった。
俺は豊前江。今は赤神本丸の豊前江だ。
以前は別の本丸出身だったが、
訳あって俺は篭手切、桑名、松井と一緒に
この本丸の審神者である赤神に預けられた。
朝、まず起きてから始めるのは、
義足を付けるところから。
俺は、他の豊前江とは違い、
片足を失い、うまく走れない個体。
理由？………まあ、前の本丸で少しな。
江の3振りと一緒に遠征に行っていた時だ。
遠征先で本丸に何故か帰れなくなり、
更には現地の質の悪い祟り神に襲われちまってな。
あちこちが錆び付いて、朽ち果てた。
どうにかボロボロの身体を引きずって
本丸には帰れたが………
俺達の本丸は、俺達の匂いを辿って
本丸に行き着いた祟り神により、崩壊されていた。
生き残ったのは、俺達だけ。
その時の記憶が、今でもはっきりしている。
それもあってか………時々夢を見るんだ。
体が、崩れ落ちて…………
腐って、錆びて………やがて壊れる夢を。
帰り道が分からず、そのまま………
終わってしまう夢を。
豊前「、よし。義足装着完了っと。
さーて。皆はまだ寝てるな。
いつもどおり、ジョギングしてくるか」
───────────────
朝早く起きる派の俺は、
起きて直ぐにジョギングするのが日課だった。
まあ義足だし、うまく走れないが、
朝日を浴びながら走るのは嫌いじゃない。
………だが、速さがないと不安になったりする。
俺が朝ジョギングをするのは
夢でのモヤモヤが、心をざわつかせてくるから
それを吹っ切りたくて、なんだ。
でもたまに、いつまでも吹っ切れない時がある。
後から後から、モヤモヤしたもんが
俺を追いかけてくるみたいでさ。
豊前「ｯ………はぁはぁ、ぜぇ………っ、」
そして、息が上がって、
もう走れねぇってなって………顔を上げた時。
分からなくなる。
豊前「…………(あ、れ)」
帰り道が、分からなくなるんだ。
何でかな。現世で“豊前江”が
行方不明になっているから、なのか。
それとも、前任の審神者の本丸が崩壊して、
帰る場所を失った、あの時の喪失感からなのか。
自分でも分からないが………
分からなくなるんだ。
このまま、あの夢のように。
朽ち果てて、消えちまいそうになる。
それが怖い。
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2021年7月14日 11時
