Ending参 ‡深淵からのさえずり‡ ページ41
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鶴丸「………A、？」
奈々『？A？申し訳ありません………
それは誰かのお名前でしょうか？』
鍛刀部屋に、本丸の主がきた。
その主はAだった。
しかし、彼女は幽世の事を覚えていないらしい。
いや、寧ろ転生した、と言った感じだった。
奈々『？？？えっ……と………
審神者名は
ここは、奈々瀬本丸。
今日から貴方はここで過ごすんですよ。
これからよろしくお願いします』
他人行儀の口調でそう言われた。
………いや。思い出さない方がいい。
あの狂った世界での出来事は。
終わった事だ。
そう、終わった事。
だがやはり気がかりなのは鶯丸の存在。
あの世界から抜け出して、
その反動で忘れてしまっているだけかも知れない。
きっとここにもあいつが。
鶴丸「“鶯丸”は居るのか？」
奈々『………ぇ、？』
鶴丸「俺がここに居るって事は、
あいつもここに居るはずだ。
なあ、居るんだろう？」
奈々『鶯、丸………？
まだうちには居ません、け、ど』
そんな、主の言葉に………俺は声を失った。
…………思い出せない。鶯丸、とは誰だ？
いや、知っている。天皇の御物として、
刀だった頃に何度か会ったはず。
違う
名前は、聞いた事はある。
古備前の名刀だ。
違う
…………違う。もっと………親しい関係だった筈。
何でだ。何故こんな中途半端に
俺はあいつを覚えているんだ。
“生きろ”───
鶴丸「…………」
───────────────
月日は流れ、俺はあの世界での出来事を
思い出す事は無くなった。
鶯丸は顕現したが、ふとした時にあいつを見ると、
何かが抜け落ちたように………
虚無感を抱くようになった。
あの夢は、何だったのか。
ただ………俺は、何としてでも
生き抜かなければならないと強く思う。
理由は分からないが………
春が訪れる度に、
時折聞こえる。
“生きろ”───と。
Ending参
“深淵からのさえずり”───
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2021年4月20日 14時
