肆佰拾玖 ページ22
燭台切side
燭台「………頼んだよ」
別れた仲間にそう告げながら
僕は彼らに背を向ける。
目の前には妖魔が居る。
…………崩れて消えるだけかと思っていたけど、
刀らしく、戦って消える方が
やっぱりいいよね。
燭台「さて。片足だけで、どこまで出来るか………
まあ、戦えるなら何だっていいかな」
妖魔《オオォォ……！》
燭台「………来なよ。僕は燭台切光忠。
青銅の燭台をも斬る太刀。
夏田の名に誓って、
ここから先一歩たりとも通さない。
その切れ味を試したい子は、誰かな？」
死ぬ事に別に執着はない。恐れもない。
ただ……もう少し、生きてみたかった。
でも鶴さん達の作戦が成功すれば…………
帰られるかも知れない。
今の僕らにとっては僅かな希望だ。
ならば全力で守りと押して見せる。
必ず───
───────────────
近づいて来る妖魔を片っ端から斬り伏せる。
動く度に、体が崩れた。
もう痛みすら感じていない。
それでも戦い続けた。
死ぬのは………怖くない。
だって、君達に………会えるかもしれないから。
燭台「が、！ぅ、…………っ、」
主………青空君………
僕にも、あの世があるのなら。
もう一度。会えた、なら…………
燭台「ﾊｧﾊｧ……ｯ、ﾊｧ………
ははっ……だよ、ね。
そう簡単には、いかない、か」
蜘蛛《ミツタダァ………ア"ァァ！！》
息を絶え絶えにしながら、辺りをを見渡す。
そこに現れたのは例の大蜘蛛だった。
僕を探して、辺りに瘴気を撒き散らすように、
彼女の姿をした物の怪が、前に立ち塞がる。
乾いた笑いしか出ない。
そうだね。僕は許されない。
きっとこの先も………
でも。
燭台「………おいで、主」
何度だって、殺してあげる。
こんな悲しい場所に、君を置いてはいけない。
オオォォォオオオッ！！
燭台「！」
その時、もう立てない僕の前に立ち塞がる
巨体の影が現れた。僕を守るように。
…………それは、大俱利伽羅だった。
黒龍は大蜘蛛を前に威嚇している。
嗚呼、君はまだ………そこに居るんだね。
燭台「倶利伽羅」
その龍眼にはまだ、彼の面影がある。
知っている。その目を僕は知っているよ。
ごめん。もう下を向かないから。
燭台「…………ありがとう。
いこうか。一緒に」
燭台切side〜end〜
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2021年4月20日 14時
