肆佰拾 ページ13
妹を守れなかった俺。
仲間を裏切る俺。
情けない、情けない。
だがここで………妹を救えなかったら。
妹が愛した、彼女の刀を救えなかったら。
本当に、俺はただのクズな兄でしかない。
俺がやらなければならない。
神を祓えるのは、この俺しか居ないのだから。
沈黙が流れた。
視線が痛い。彼らは俺を憎むだろう。
構わない。それが俺の罪だから。
三日月「………主よ、顔を上げておくれ」
七緒「！三日月……」
太鼓「！」
蜂須「主っ！！」
皆の代表である三日月が沈黙を断った。
俺は言われるがままに顔を上げる。
すると三日月は何処からか本体を取り出し、
抜刀すると俺に突きつけてきた。
それに対し、止めようと
太鼓鐘と蜂須賀が俺の前に出る。
だが………三日月は緩やかに微笑んだ。
三日月「…………俺達は刀剣。お主の刃であるぞ？
どのように扱うかは、お主が決める事。
口出す気はない」
七緒「な、にを……」
三日月「よく見よ。これがお主の刀だ。
俺達は………例えお主が審神者を降りても、
苦では無いのだ。
最後まで共にあると、この刀身に誓っておる」
七緒「そんな、分かっているのかい？
君達の、本丸を俺は………、」
三日月「何を言うておる。
お主の下が、我らの帰る場所。
本霊へ還る時が来ようとも、
俺はお主と共にある」
“我らは知っている”
“お主に、ちゃんと愛されていた事を”───
………嗚呼。
許されないと、思っていた。
俺は、自分勝手に決めつけ、
挙げ句に彼らを捨て置くような愚かな人間。
だが………ここにいる全ての刀剣は
誰も俺が罰として審神者の任を
解かれることに対して、反論などしなかった。
彼らは、知ってくれていた。
俺を、許してくれたのだ。
ボロボロと涙が溢れた。
土下座したまま、泣き崩れた俺を
三日月は刀を収めながら、俺を抱き締めてくれた。
三日月「大丈夫だ、主。
俺達はお主を責めんよ」
七緒「すま、ない………すまない、す、まない……！
三日、月………皆……っ。
すま、な………っ」
三日月「お主は一人で頑張ってしまうからな。
俺は嬉しいぞ。話してくれて、感謝している。
さあ、妹君を救いたいのだろう？
言っておくれ、主。俺達は何をすればいい？
お主ならば、俺達は協力を惜しまんぞ」
七緒「………嗚呼っ。ありがとう。
………ｯありがとう」
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2021年4月20日 14時
