【刀剣乱舞】壱を探す話

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そんな事を考えているせいか、
一向に返答をしない私に
少し呆れ混じりに相手は笑った。







ゴウ《毒じゃねぇよ。
ただの水だ。俺だって飲んでるくらいだしな》


『…………水？』


ゴウ《酒が好きだが、ここにはねぇ。
まあ、飲んでる雰囲気を味わってるようなもんだ》


『………………………い、ただき、ます』









随分長考した後に、飲む事にした。
ヨモツヘグイにはならない感じだ。
相手も飲んでいて、喉を鳴らす音もした。
恐らく大丈夫だろう。

まあ、人外の感覚で“大丈夫”は
あまり信憑性はないが、
それよりも機嫌を損ねて食われるよりかはマシだ。


コトン、と私の足元に何かが置かれた。
座って私はそれを受け取る。
ちょっと欠けた盃だった。
匂いとか確かめて、スッと飲む。

…………水だ。

私が喉を鳴らす音が聞こえたのか、
満足そうに相手は笑った。


それにしてもこの水、案外美味しい。









ゴウ《へへ、懐かしいなぁ。
昔もこうして誰かと飲んだ気がするぜ。
随分前から一人で居たが、たまにはいいな。
お前さんは酒は飲める口か？》


『え、い、いいえ。
そもそも飲んだこともありません』


ゴウ《？何だぁ？元服してねぇのか。
あいつみたいだ。詩重もクソ真面目だな》


『(クソ真面目て………
“あいつ”って、誰の事だろう)』


ゴウ《それにしても、お前さんは
どうやってここに来たんだ？》


『迷い込んで………来たんです(嘘は言ってない)』


ゴウ《迷子か。なら安心した。
侵入者なら追っ払わなきゃならねぇしな》









追っ払う？

先程から聞いてはるが、ゴウさんの言動は
どこか抜けているように感じた。
まるで、記憶が曖昧になっているみたいな。


………ここに留まらなければならない理由。
もしかして、彼は何かを守っている？
でもそれは………？









『………貴方は、何かを守っているの？』


ゴウ《守る？…………そうかも、知れねぇな。
ここを荒らされねぇように………
“調査”だの“取り壊す”だのしてくる
連中がたまに来るんだ》


『！』









ゴウ《刀剣だの、役人だの、歴史なんとか軍だの。
本当に厄介な奴らが来るもんで、
あちこちに下手なりに結界を張って置いたんだ。
ここは俺の領地だ。勝手に入られちゃ困る。
けれど殺しても追っ払っても、奴らは湧いてくる。


だからいつまで経っても………
俺は、ここを離れられねぇ》









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