弐佰肆拾玖 ページ10
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薊「君達のお陰だよ。
冬矢の精神は安定してきている。
まだ油断はならないけれど、
このままならきっとあの霊力も
使いこなせるようになるかも知れないね。
そうなればあの子は歴代でも立派な審神者になれる。
これからも支えてあげてやってくれ。
彼の未来が、明るいものへとなって行けるように」
長谷「はい、薊様」
切国「嗚呼」
…………だが、その未来は……訪れる事は無かった。
俺は冬矢様を信じていた。
慕い、いつまでも共に有りたいと願った。
なのに…………彼は、俺を………
俺達を裏切った。
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今剣「あ、あああっ！！？
いや、だ………いやですっ！
だれか、だれかとめてください！！」
最初に被害を受けたのは初鍛刀だった今剣だった。
突如、今剣は悲痛な声を上げながら、
仲間達に襲いかかった。
今剣は錬度も高く、短刀の中でも強く、
そして素早かった。
今剣は確実に他の刀剣達の首を掻き切って行く。
次々と仲間は折れて逝った。
そんな今剣に続いて、
仲間同士で殺し合いが始まった。
何故。それは俺が聞きたい。
突然始まった無差別な殺戮。
互いを殺し合う、理不尽な戦闘。
“殺して！殺して！！嫌だぁっ！”
“いち兄助けてぇっ！！”
“じっちゃ………じっちゃん………お、れ……”
“浦、島………どう、して”
“兼さ……っ！皆お願、い！僕から逃げてっ！！”
血飛沫の雨が止むことは無い。
鉄の匂いが消えることが無い。
視界は赤に染まって行った。
そして、やがて俺にもその症状が現れ始めた。
唐突に思考が破壊衝動へと傾いた。
“壊せ”と、誰かに命じられているようだった。
腕を見てみる。そこには烙印のような
赤黒い印がいつの間にか刻まれている。
これ、は………術？
何者かに術をかけられたと言うのか。
長谷「ｯ…………(駄目だ、耐えろ！！)
ゔっ、ぁ……ぐっ………や、山姥、切………！」
山姥切に、伝えなくては。
主にも今すぐに、
ここから逃げるように伝えなくては。
遠征に向かった山姥切ならば、まだ………
いやそれよりも、薊様は？冬矢様は？
お二人は無事か………？
俺はまだ、理性が残っている。
俺が、俺がこの本丸を守らねば。
山姥切が不在の中、
俺はあいつから本丸を任されたんだ。
守らねば。俺が。
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年10月29日 14時
