＊白き焔に雪降りの舞を＊漆章 (ページ5)

今日:32 hit、昨日:0 hit、合計:10,930 hit

弐佰肆拾肆ページ5

･

冬矢「僕の体はね、多分感じた通り
霊力が強すぎるんだ。
そのせいで体も追いつかなかったりして………
上手く制御できなくて」

冬矢様はそう言って、
羽織を握りしめながら語り始めた。
元々、この本丸にいる者達は二振り目が大半らしい。
初期刀である山姥切以外の刀は
主が持つ強すぎる霊力によって
朽ち果ててしまったらしい。

今いる山姥切以外の刀剣は皆、
薊様の力を借りて顕現したそうだ。

冬矢「僕の力は強すぎて、
誰にも近づく訳には行かないからここに居るんだ。
前みたいに………君達を壊してしまうかも知れないし。
制御出来ないから顕現も難しくて。
あの人の手を借りている。

だからまあ、お父さんが
主ってのはあながち間違いじゃないんだ」

長谷「？薊様は父君なのですか？」

冬矢「あ、えっと………僕、家族をこの霊力のせいで
居なくなってしまったから………
ちょっと照れくさいけど、家族として
あの人の事は“お父さん”って
呼ばせてもらってるんだ。

制御できなくて、悲しくて、
辛かった時に………薊さんが助けてくれたんだ。
僕の専属のカウンセラーになってくれたしね」

長谷「そう、ですか」

切国「俺は初期刀と言う立場からか、
主の力に影響は無かった。
俺が出陣や遠征に行かないのは、
冬矢を傍で守る為だ。

冬矢の敵は多すぎる。
刀身も極力抜かないようにして、
付喪神としての力も出さないようにしていた。
主の体は繊細で、負担がかかる」

冬矢「僕は“一緒に居て”って
約束のつもりだったんだけど………

僕に近づく悪霊とかも自然に
破滅してしまうくらいだし……」

冬矢様はそう言って、苦笑なさっていた。
今は少し距離のある場所での会話だが、
その話は本当なのだろうと思った。

満ち溢れる霊力………それを常に放出している状態。
だからか主の顔はあまり良くない。
嗚呼、彼は“長くないのだ”とも悟った。

暗い、誰もいないこの離れの蔵の中で、
寂しい思いをしているのではないか。
大人びている主ではあるが、まだ幼い。

寂しくは無いんだろうか。