弐佰漆拾参 ページ34
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自分を極め、主に尽くそうとした。
あいつは俺を“俺”として見てくれた。
その恩を返す事もままならないまま、
あんたは居なくなってしまったが、
記憶が無くとも……誓いは、思いはまだ、
今も胸にある。
鉢巻を頭部に巻けば、気が引き締まった。
布を外したら、狭い世界が広くなった。
周りもよく見える。仲間の顔も、よく見える。
切国「…………迷惑をかけた。
寄り道に付き合ってくれ。
俺は長谷部と幽世から出なければならない。
行こう、藤ノ都へ」
山姥切side〜end〜
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鶴丸side
山姥切はそう告げ、先を歩き始める。
布を外した山姥切の瞳には
今まで見られなかった光が宿っていた。
布を被っていた時は影であいつの目の色は
よく分からなかったが………
今は憑き物が落ちたように
澄んだ翡翠色をしていた。
澄み渡る、蒼い瞳。
鶴丸「(…………？なんだ)」
その時ふっと思い出した。
翡翠色、とはまた違う蒼を………
俺は知っていたような気がした。
そう、もっと深い蒼。
度々何かしらの場面で既視感を抱く事は多かったが、
今回は少し、違うような………
既視感、ではない。
確かな記憶。
“思い出した”、と言う方が
やはりしっくりくる。
あの、蒼色は…………
鶴丸「…………！お、おい鶯っ」
鶯丸「なんだ」
鶴丸「俺達の本丸の初期刀、
“歌仙兼定”ではなかったか？？」
鶯丸「！」
鶴丸「お前は少し記憶があるんだろう？
今、少し思い出したんだっ。
なあ、初期刀が歌仙兼定だと
君は覚えているかい？」
鶯にそう問えば、鶯は少し目を泳がせる。
そしてしばらくして頷いた。
否定しない………俺達の本丸の初期刀は
やはり歌仙兼定だったのか。
しかし何故今思い出したんだ？
鶯丸「………それだけ真実に近づいた、
と言う事だろう。俺は言ったはずだ。
お前は思い出さなければならない、とな」
鶴丸「君が教えてくれれば、
手っ取り早くないか………？」
鶯丸「駄目だ。今はまだ」
鶴丸「何だって言うんだ…………」
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年10月29日 14時
