弐佰漆拾弐 ページ33
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切国「………あいつは、俺が止める。
長谷部は、あんな奴じゃない。
もっとも真っ直ぐで、忠実なんだ。
それが、第三者の手で捻じ曲げられただけだ。
頼む………あいつを、」
俺は守れなかった。
だから、残されたものがあるなら、
今度こそ………手を離さないようにしたい。
俺達の主はきっと、こんな事は望まないはず何だ。
思い出せなくなったとしても、それだけは分かる。
鶴丸「………お前は偉いな」
切国「………？」
その時、鶴丸がそう口を開いた。
鶴丸「大丈夫だ。ちゃんと分かっている。
君がそこまで言うんだ。
あの長谷部はきっと、そう言う奴なんだろうな。
だから、長谷部をあのままにはしないだろう？
そこで終わりじゃない。
まだ、俺達は終われない………」
切国「鶴丸」
鶴丸「終われないんだ。取り戻すまでは………
ここから、出るには……まだ。
長谷部を取り戻すなら、俺も協力するぜ。
なあ、皆」
切国「ｯ…………すま、ない………すまない」
いつからだっただろうか。
振り返って、背後を見れば………
いつもいつの間にか、仲間は居なくなっていた。
前には主と、あの日の長谷部しか………いな、くて。
後ろには何も無いはずだったのに、
肩にのしかかるものは、重くて仕方なかった。
だが今は…………鶴丸の言葉、
そして………後ろを振り返れば、仲間が居る。
そこで気がついた。
俺は、後ろに居た筈の仲間を
置いて行ってしまっていたんだ。
今度は、間違えず………俺が守りたいと
願う物を守れるだろうか。
………いいや、もう違う。
守らなければならない………
主はもう居ない。
だが、せめて長谷部。
お前が道を違えようとしているなら、
初期刀として、仲間として。
友として。
もう一度、あんたと肩を並べる日を………
燭台「………何か、吹っ切れたかい？」
切国「ｽｩ…………ふぅ…………嗚呼」
燭台「そう」
『切国』
切国「A。藤ノ都はどっちだ」
『ええんやね？』
切国「………」
『…………藤ノ都は、あそこや』
洞窟の出口に出て、Aが場所を示す。
彼女が指差した方角を見ると
広大に広がる緑の森の中で、
一部だけ藤色の森がある。
バサッ
鶴丸「お、おい、山姥切。
布はもういいのか………？」
切国「嗚呼、必要ない」
視界が広くなければ、見つけれない。
大切な物は、身近にある。
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年10月29日 14時
