弐佰陸拾玖 ページ30
山姥切side
堕ちて、堕ち続けて………
知らぬ間に、虚無の中にいた。
“主を頼む”
すまない、長谷部。
俺はあんたとの約束を果たせなかった。
守ることが出来なかった。
力をつけて、今度こそ取りこぼす事がないように
していたはずだった。
なのに、俺はあんたとの約束も、
主との約束も、何一つ、守れなかった。
俺は自分を呪う。
【何も守れない刃など、役に立たない刀など……】
【俺は俺自身が、許せない】
───カミサマ───
───どうか、俺を───
───殺してください───
肉を裂く音。
骨が砕かれる音。
鉄の匂い。
それら全て、俺の手によって生み出されていく。
体が冷たくなった。赤黒く染まって行った。
動かなくなっていき、その瞳に光が失せていく。
俺は呪われている………
触れた者を壊して行く。
痛い。身を裂くような痛みが走る。
苦しい。喉の奥がつっかえる。
辛い。その光景を、もう見たくない。
俺が、神だと言うなら………
この願いを叶えてくれるのは誰だ。
…………もう、誰でもいい。
俺を、許さないでくれ。
“叶えましょう”
“全てを守ろうとする
傲慢で強欲な貴方の願いを”
“強欲ノ罪人よ”
そんな、断罪の声を聞いた。
山姥切side〜end〜
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年10月29日 14時
