弐佰陸拾漆 ページ28
･
ドスッ！
切国「ゔ、ぐっ！？」
そんな、隙だらけだった俺の背を
貫く刃があった。
震えながら振り返れば、満足そうに微笑む
薊の姿だった。
薊は俺の刀身で俺を刺していた。
薊「君はどんな山姥切よりも強い個体だった」
切国「お、前………っ、あ"ぐ、！」
薊「勿体ないが、強いからこそ、お前は脅威だ。
だがまあお前達は自決出来ない。
だから最期は仲間の手で、ね」
膝をついた俺を横目に薊は告げる。
そして、視線の先には………血塗れの長谷部が居た。
長谷部は焦点の合わない、虚ろな目をしている。
！薊が長谷部に何かしたのか……！？
切国「は、せ………！ぐ、」
薊「…………嗚呼、長谷部」
長谷「”冬矢様”………これは、一体………」
切国「！？(冬矢？冬矢は………俺の腕に居る。
長谷部には、俺や冬矢が見えていない？)」
薊「へぇ。まだ理性があったんだ。
“彼”を使って、顕現させた
皆にはちゃんと呪術をかけた
筈なんだけれどな………」
長谷「う、そ…………でしょう？
ご冗談………ですよ、ね？貴方が、この自体を
意図的に仕組んだ………なん、て」
薊「ふふふ………勿論“俺”がやったよ？」
長谷「ｯ………！！な、何故………
何故このような真似を！！貴方が、何故！！」
切国「待、て…………！長谷部っ、そいつは、！」
薊「まあ、今更だしね。
頑張って理性を保っている
長谷部に“だけ”教えてあげるよ」
薊はそう言って、一度動けない
俺の方へ視線を向けた。
薊の目的は禁術を使う為だと言う。
内容はあまりにも冒涜的なもの。
人の蘇生は世界の理に反する事。
だが大量の神気と霊力を集める事ができれば、
可能なのだと薊は告げる。
そして、その話から薊がここに来たのは
主の精神治療の為ではない。
主が持つあの強い霊力が目的だった。
こんなやつの為に、主は、
死ななければならなかったのか。
まだ13の子供を。
長谷「ち、が………ぁ、ああっ！！」
薊「はははははっ！！
気でも狂ったァ？あはは、ははっ！？
嗚呼、楽しいネ？長谷部？
楽し、いネェ」
薊の言葉に、長谷部は絶叫した。
薊は実に愉快そうに笑っている。
もう、止めてくれ………頼むから。
俺にもっと力が、あれば。
力が、あれば。
力を、ちからを、チカラを。
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年10月29日 14時
