弐佰陸拾参 ページ24
毎日、毎日。
俺と長谷部は主に会いに行った。
長谷部は何故か主に会いに行く際、
時間が被ると不機嫌になっていたが、
俺は長谷部と共に居たほうが俺は嬉しかった。
キィ………
長/切「「！！」」
冬矢「はせ、べ………ま……んば………？」
切国「あ、主………っ」
そして、願いが届いたのか、
主はその一歩を踏み出した。
重くて、辛いものだっただろう。
その一歩が、重かったのを………俺はよく知っている。
あんなに遠く、届かなかった主が、
今………目の前で、俺をその瞳に写している。
手を伸ばせばすぐそこに居る。
長谷「主っ！」
冬矢「ｯ…………あ、」
切国「主」
冬矢「あ、はは………ははっ。
初めて、見た感じだよ。二振りの、顔………
そんな顔を、してたんだ、ね」
この日を待っていた。
いつも願っていた。
主が、笑顔を取り戻す日を。
───────────────
主が力を制御出来るようになり、
主は外へ出れるようになった。
帰ってきた主に、本丸の皆は大いに喜んだ。
信濃「大将大将！懐！懐に入らせて！！」
冬矢「う、わっ、信濃………」
信濃「あぁ………あったかい！大将の懐……」
冬矢「えへへ………くすぐったいよ」
切国「長谷部」
長谷「なんだ」
切国「ありがとう」
長谷「？」
切国「あんたのお陰で、主は本丸に戻れた」
俺はあんたのようになれただろうか。
主に尽くせているだろうか。
長谷「…………いや。俺は何もしていない。
主があそこまで前を向いたのは、恐らく………」
切国「？長谷部？」
長谷「…………何でもない。“山姥切”………俺は、
今後も主の役に立てるだろうか」
切国「！(初めて、俺を呼んだ……)
………何を言っている。
俺はあんたを誰よりも信頼している。
あんたはこの本丸の刀で、
主の傍に誰よりも居てくれたしな」
長谷「………そうか」
切国「あんたは、あんたのままでいい………」
あんたのような、歪みない、
真っ直ぐな…………刃に。
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年10月29日 14時
