弐佰陸拾 ページ21
精神的に弱っていった主。
その心の隙が反映されてしまったのか、
時折妖怪共が本丸に迷い込んで来ていた。
大体の妖怪は主の力で消滅するが、
耐性のある妖怪は主の力を欲して
襲ってきた時もあった。
俺は自分を鍛えた。
今の主を守れるのは俺だけだ。
俺が主の味方でいなくては、あいつはあのまま、
独りのまま………死んでしまう。
強くならなければならない。
強くならなければ、主を…………守れない。
主を守らずして何が刀か。
俺は託された。皆に、長谷部に託された。
だから誰よりも強くならなければ。
“ね、ぇ………まんば…………“
”君だけは、消えないで”
“僕の傍に、いてね………？”
ある日の主が、襖の向こうからそう………
声を震わせながら言った。
嗚呼、俺は傍にいる。約束する。
あんたの事は、俺が必ず守る。
写し何て、もうどうでもいい。
他でもない俺が、やらなければ。
弱さは見せない。二度と。
弱いままだったら、あんたを守れない。
必ず。
───────────────
そんな日々が続き、ある日政府の役人が来た。
本丸の状況を確認した役人の一人は
この本丸の解体を告げた。
俺は断った。ここが無くなれば、
本当に主は居場所を失うからだ。
そう説得していた時、
政府の重鎮の一人は口を開いた。
主の精神治療をする必要がある、と。
そこで、薊に出会った。
薊「もう大丈夫だからね。心配いらないよ。
だから出ておいで。私と一度話しをしよう」
冬矢「……………」
薊「ふむ。今回の子は中々手強いかな」
切国「………本当に大丈夫なのか」
薊「勿論さ。私は術には詳しいんだ。
山姥切、君も大変だったね。
大丈夫だよ。君の主はちゃんと治るからね」
薊は政府から派遣されたカウンセラーだった。
術やら呪いやらに詳しいと言う薊によれば、
主の強すぎる力は、主が生まれ持った
呪いのようなものらしい。
強すぎる霊力には神気も混ざっており、
主はまだ母親の肚にいた時、
神との接触したか何かで、
主自身にも神気が宿っていたそうだ。
生まれながら持っていた霊力と
神気のぶつかり合い。
人間の言葉で例えるなら化学反応的な
拒絶反応により、主の力が暴走している
と言う話だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年10月29日 14時
