弐佰伍拾伍 ページ16
ちらりとうちは燭台切を見る。
さっきまで切国が負っていた傷と
同じ箇所に燭台切の体にヒビがある。
あれはうちでも直せへん。
それが燭台切が払った“代償”であり、呪いだから。
鶴丸「山姥切の傷は癒えているんだよな？」
燭台「一応は………」
鶴丸「………では何故山姥切は
目覚めないんだろうな」
切国「……………」
切国が目覚める様子はない。
瞼は固く、閉ざされたままやった。
まるで目覚める事を拒むように。
でも、切国は目覚める。そう決まっている。
今後の展開をうちは知っとる。
切国は………助かる。
そう分かっては、居るんやけど………
やっばり、毎度心配になる。
『(…………兄さんもまた、辛い過去と
向き合おうとしとるんか………)』
Aside〜end〜
───────────────
鶯丸side
鶯丸「…………“録”」
録《なんだ》
道中、俺は皆には聞こえない声量で
先程から傍らにいた“録”に声をかけた。
鶯丸「山姥切は、ちゃんと目覚めるのか」
録《安否を気にしているならば山姥切国広は無事だ。
直に目も覚める。それも決まっている》
鶯丸「決まっている、か」
録《俺の記録を読んだなら、
山姥切が無事である事はお前も知っているだろう》
鶯丸「俺は記録上の言葉を疑っている訳ではない。
だが、記録されている事と実際に起こる事は違う。
…………不安なのさ」
録《不安。俺には理解出来ない感情だな》
鶯丸「…………だろうな」
隣にいる録は表情変えることなく、淡々と答える。
………やはり、あいつとは似て非なる者か。
見た目こそ大包平のままなんだがな。
あいつなら、こう言った時は何て言うだろうか。
今となっては………言葉も聞けないが。
ここへ来てから、俺は眠りにつけない。
罪として、毎夜あの日の悪夢を見てしまうからだ。
録に会ってから、よりあの日の出来事を
繰り返し………思い出してしまう。
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年10月29日 14時
