弐佰伍拾壱 ページ12
そんな、そんな！
嘘だっ！そんな筈は！！
否定したかった。目の前の現実から逃げたかった。
思い出すのは、主が………冬矢様が
離れの蔵から出れたあの日。
心からの笑みだった。泣いて貴方は喜んでいた。
なのに、なのに…………
貴方はあれさえも、
全て演じていただけだったのですか？
内心では俺達を騙し、今、目の前で
不敵に笑っているように………
嘲笑っていたのですか？
そんな。
長谷「あ、ぁ、あああっ！！！
う、そだ………嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ！！
違う、貴方は、そんなお人では！
違う違う違う違うっ！」
違う。貴方は………！！
信じたい。あの日の貴方を信じたい。
悪い夢だ。悪い夢を見ているのだ。
目を覚ませ、目を覚ませ。
目覚めようと何度も己の体に傷を作る。
だが、覚めた感覚がしない。
痛い………いやそれよりも、俺の中で築いていた物が
崩れ去ったような喪失感が勝る。
あり得ない。冬矢様が？そんな、
冬矢様はまだ13の子供で、
霊力が制御出来ず、それを嘆いていた。
“違う”
違う！冬矢様は、俺達を思い………
自ら孤独を選んで、辛い道を歩んでおられて。
“ちがう”
違うっ！！！主が、そんな事をするお方では！！
“チガウ”
長谷「ち、が………ぁ、ああっ！！」
冬矢「はははははっ！！
気でも狂ったァ？あはは、ははっ！？
嗚呼、楽しいネ？長谷部？
楽し、いネェ」
“イヤダ”
冬矢「ﾊｧ………あー、面白かった。
さて、もう殲滅した頃かな？
ふふふ。物はモノらしくしていた方が
やっぱり扱いやすいな」
“オイテ、イカナイデ”
冬矢「嗚呼………もう直ぐ、もう直ぐ会えるね。
楽しみだなぁ………
もう直ぐ蘇らせる事が出来る」
行ってしまう。主が、行ってしまう。
置いてかれてしまう。
主に、俺はまた………捨てられるのか。
何故………信じた者は皆、俺を置いていく？
行かないで、ください。
長谷「あ、るじ…………」
･
･
冬矢「さて、もう君達には【用は無い】かな。
さようなら。
俺の目的の為に、死んで糧になってくれ」
･
･
あぁ…………
･
貴方はもう、居ないのか。
･
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年10月29日 14時
