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佰捌拾伍 ページ26











赤い瞳が、俺を射抜く。
強い決意を宿すような炎を、伽羅坊は揺らしながら
ジッと暫く俺を見つめていた。

その姿が………あの鬼の娘と重なる。
同じ目をした、彼女に。









ズキッ………!!







鶴丸「!!」







チリン───







鈴の音が聞こえた。例の頭痛が走る。
脳裏に、知らない筈の情景が
浮かび上がり、視界は変わる。

思い浮かべたのは赤い花。
飛び散る鮮血に、鉄の匂い。


やけに、精密に思い描く光景は、
戦場では慣れた光景の筈だと言うのに、
その血の花を咲かせるのが“敵”では無かった場合、
状況は大きく違うものだ。





居た、んだ。その光景に、彼女が………
Aが居たんだ。

だが………情景の中にいた彼女の胸には、
深々と刃が突き刺さっている。
彼女の瞳に光は無い。



あたりは雪だろうか。
そのせいで、目の前の赤はよく映えた。

彼女が絶命する光景。
倒れていくAの体はやたらゆっくりに見え、
容赦なく俺の目に焼き付けていく。









鶴丸「ッ………は、……ッぁ、」









一瞬の走馬灯のようだったが、
忘れていた呼吸をようやく思い出し、
深く息を吐く。

目の前にいた伽羅坊は、俺の様子を見て
少し困惑したようだった。
心配をかけまいと、俺は手を出して
伽羅坊を制する。


………今のは、俺の記憶………だったのか?
それともAが………ああなると言う未来余地か。
何れにせよ、あまりいい気分にはなれなかった。



あまりにも、現実味のあるもの………だったし、な。
嫌な予感がする。









“死なへんからへーきへーき”









いつもあんな事を言っていたが………
いや、待て………おかしい。
俺はこの世に来からAとは初めて会った筈だ。

今の走馬灯は何だって言うんだ。
まさか、Aは………俺を知っているのか。


胸に空いた大きな穴は、埋まらない……
俺は、何を忘れていると言うんだ。









“お前は絶対に思い出さなければ───”









鶯丸………やはり何か知っていたな?
俺に、どうしろって言うんだ。









鶴丸「ッ………すまん、大丈夫だ。
伽羅坊、きみに付き合おう」









なあ………いつも影がかかって分からない。
大事な思い出の筈なのに、
いつも俺の脳裏に過るきみは誰だって言うんだ。

誰だって言うんだよ………

なんで、思い出せねぇんだ………









教えてくれよ………









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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2020年9月29日 18時

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