佰捌拾肆 ページ25
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俺はここに辿り着くまでの経緯を伽羅坊に話した。
(伽羅坊は呆れた顔をしていたが………)
鶴丸「し、仕方なかったのさ。
巨大な大蛇が仲間を喰うところだったからな」
倶利「…………【とにかく、光忠は居るんだな】」
鶴丸「嗚呼。逸れたのは恐らく俺だけだ。
大洪水の時、皆とは少し距離があったからな。
あまり根拠は無いが、他の仲間と一緒に居る
可能性はある」
倶利「【光忠がこの世界にいるなら、
あいつはここにいずれ来る】」
鶴丸「？どういう事だ」
倶利「【光忠を呼ぶ声がある方角から聞こえる。
光忠に近い気配を持つ奴らは
その声に答えて、向かって行く姿をこれまで見た。
向かう先は洞窟だ。そこに大蜘蛛がいる。
光忠の主だった、妖魔がな】」
話によれば、ここには足を切断された
身動きの出来ない大蜘蛛が眠っており、
光坊に近い存在を引き寄せ食らうという。
まるで光坊を求める赤子のように
呼ぶ声に答えてしまった者らは、
洗脳されてしまうらしい。
俺を探しに皆、この都に来るならば………
光坊が危うい訳か。
倶利「【俺は光忠を探し出し、
現世に帰るのが目的だ。
だが光忠を探している間、
徐々に自我を失いつつあった。
名前も分からず彷徨っていた】」
鶴丸「そこに俺が来たわけか。
それにしても光坊やきみはの主が
妖魔に成り果て、この都の主となるとはな」
倶利「………【大蜘蛛は俺の主じゃない。
俺は元々、光忠とは違う本丸の出だ。
別に光忠の主が大蜘蛛になろうが
正直俺は知った事じゃない】」
鶴丸「違うのか」
倶利「【俺は光忠に拾われた身だ。
その借りをまだ返せていない。
借りを返すために光忠を現世に帰す。
俺にあるのはこれだけだ】
…………ｯ！！」
鶴丸「！伽羅坊、どうした」
その時、伽羅坊は手袋のズレを直す。
手の甲に刻まれた数字は“肆”………
そして………“蝶の刻印”だった。
すると伽羅坊の両眼が血のように赤く染まり始めた。
刀剣男士としての力ではない、何らかの力。
【闘争本能・発動】
倶利「【大蜘蛛が光忠に呼びかけ始めた。
光忠が近くにいる。今の俺は鼻が効く。
国永、あんたはついて来い】」
“例え、獣になろうが、知性をなくそうが”
“俺には果たすべき、約束がある”
“誓いは破らない”
“それが俺が決めた道だ”
そんな、伽羅坊の声を聞いた気がした。
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年9月29日 18時
