佰漆拾陸 ページ17
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あたりはとても静かやった。
燭台切は大蜘蛛………いや、
かつての主人を抱きかかえる。
彼女の心臓に自身である刃を突きつける。
柔らかく、今までに無い程、
優しい笑みを浮かべる燭台切。
そして、とても………悲しげな笑みやった。
子をあやすような優しい手付きで、
燭台切は最期の言葉を紡ぐ。
燭台「大丈夫。君に酷い事する人は、
もう………居ない、から」
蜘蛛《………ツ、タ……ダ……》
燭台「おやすみ。今度生まれ変わる時………
君が………心から愛されます、ように」
そして、彼は彼女の胸に刀を突き刺した。
彼の涙が、零れ落ちる。
その雫は主人であった幼い少女の頬に伝う。
彼は、彼女に永遠の………最期の子守唄を捧げた。
少女の虚無の瞳は、確かに燭台切を捉えとって、
ゆっくり、眠りを促す子守唄に身を預けるように
フッ……と最期の吐息を一つ零して、息を引き取る。
チリチリと、灰と化して………
大蜘蛛は消えた。
朝焼けの訪れない幽世の世界。
朝日の代わりに、終わりを告げる黄昏日が、
うちらを照らしていた………
───────────────
切国「………で、大倶利伽羅は
燭台切と同じ本丸所属の刀剣なのか」
鶴丸「おう。彷徨ってたのを俺が拾った」
『そんな犬や猫のように………』
鶴丸「実際あっているんだがなぁ笑
珍妙な獣の姿だったぜ？
体格は虎、足は鷹、翼もあって、鱗がある」
鶯丸「まるで“龍になりかけ”の獣だな」
鶴丸「…………それだ！」
『何で戻ったん？』
鶴丸「いやそれがな？」
────────────
鶴丸「きみを見ていると、
【大倶利伽羅】と重なるんだよなぁ。
嗚呼、大倶利伽羅ってのは俺の仲間で………」
虎坊《！！！》
ボフンッ！！
鶴丸「うぉうっ！？は？おおおっ！？
と、虎坊が………何か痛い感じの
伽羅坊になった！？
驚きだ！いってててててっ！！？」
────────────
鶴丸「と、こんな感じで名前を
呼んでやったら人形に戻った」
………嗚呼、まあつまり何らかの理由で
鵺みたいな妖魔に姿を変えられた挙げ句に、
自分の名前を忘れかけていたら、
鶴丸のおかげで自分を取り戻した………
って、感じなんかな。
(凄く不満そうな顔しとるな……倶利伽羅)
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年9月29日 18時
