†参佰弐拾漆† ページ38
大典太side
俺は守るべき主を守る事は出来なかった。
許される筈がなかった。
幾ら側に居ても、夜蝶の病魔を
祓うことは叶わなかった。
寧ろ、俺の霊力は彼女の体を蝕んだ。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
??「二振りを封じる」
その言葉を聞いた時、正直安堵した。
俺が側に居ても、彼女の病状は悪化するばかりで、
苦しむ姿を一日中見ている事しか出来ない日々に
耐えられなかった。
これが正解だったのだと、
これが、俺のあるべき姿なのだと。
そう思って、いたのに。
夜蝶「やめ、て………光世、とソハヤ、は
何も、悪いこと何、て………
していない、のに……………！」
痣だらけの腕を懸命に伸ばしながら、
主はそう言った。
今更に気づいた。
夜蝶はまだ、俺を必要としてくれていた。
だが俺はその言葉を、受け入れなかった。
最後に見たのが、苦痛に歪む彼女の顔とは。
これはきっと報いだったのだ。
きっと、俺が壊したのだ。
人が如何に脆い生き物かを痛感した。
動物よりも弱い生き物。
壊す前に、封じられるべきだった。
いっそ、折って欲しかった。
だから、俺は自ら封じた。
もう二度と求めないと。
感情に振り回される事なく、静かに。
“一人で居れば、守らなくていい”
主の口癖だったな。
あんたの言った通りだ。
一人で居れば、壊さなくて済むのだから。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
『(人は、貴方が思っているより、
ずっと強い生き物だよ。
沫のようには消えたりしない。
だから、ここから出ましょう？
ここに一人は、寂しいよ。
私が、ここから出しますから)』
その瞳に、見透かされそうだった。
深い、深い黄昏の瞳。
その目を見てしまったら………
これまでの記憶が甦った。
嗚呼、懐かしい記憶達。
俺が忘れようとしていた記憶達。
伸ばされた手を見た。
黄昏とは、人が家に還る時を示す空の色、だったか。
“光世ー！見つけたわよっ！”
“かくれんぼ、また私の勝ちね！”
“さ、観念して、蔵から出てきなさい”
“ここから出ましょ、光世”
いつだって、彼女に見つかっては
手を差し伸べられた。
どこにいても夜蝶は俺を迎えに来た。
………また、その手を取っても良いのだろうか。
信じても良いのだろうか。
俺はその手に手を伸ばす。
まだ、望んでもいいのなら、
俺は………今度こそ、壊さぬように。
大典太side〜end〜
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冷泉 雪桜(プロフ) - ％さん» 訂正しました！指摘ありがとうございます！！これからもよろしくお願いします！ (2019年11月15日 22時) (
レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
％ - いつも楽しく読ませて頂いております！誤字があったので、お知らせしますね。参佰陸の「見つけます」が「見つめます」になっています…。更新頑張ってください！応援してます！ (2019年11月15日 18時) (レス) id: 02aec80553 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2019年11月11日 7時
