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†佰参拾† ページ11

戦い、戦い、戦い続け、
遂にその身の限界を越え…………倒れた。

その先はあまり覚えてはいない。
俺は折れた筈だった。


次に目を開けたとき、何故か俺の手には
兄者が持っていた御守りが握られており、
体を起こし、状況を把握しようと辺りを見たとき、
傍らにあったのは無惨に折られた刀身だけが
そこにはあった。



見間違える筈もない。









膝丸「あに、じゃ…………?」









その刀身は紛れもない兄者のものだった。
俺が呼び掛けても、兄者は応える術もない。
兄者は…………俺を助けるために
最後に俺に御守りを手渡した事は明白だった。

こんな、最期がどれ程苦痛なものか、初めて知った。









膝丸「兄者…………兄者っ…………!」








人の身を授かってから、
これほど怒り、悲しんだ事はない。

絶望にも近い、嗟嘆が俺を襲った。









膝丸「嫌だ、これではまた、離れ離れではないかっ!

名を呼んでくれ兄者ぁ!
俺の名をっ!“膝丸”と言ってくれっ!!
今度は、忘れないからっ!

だからっ!声を聞かせてくれっ…………あに、じゃ」








心を、初めて知ったようだった。
こんなにも残酷なものなのかと、
こんな思いをするくらいなら、

心などいらなかったと。


後悔するばかりだった。






膝丸side〜end〜
_________________

Aside









膝丸「…………これが真実だ。
俺達は記憶を奪われたまま、
主に従い戦っていた。

それから………………ッ!






君…………何故、泣いている?」


『……………ッ』









彼の記憶と共に流れ出たのは、
深い深い…………悲しみ。

自分はこんなに涙脆かったっけ。
でも、彼の感情を共感してしまった私の涙。
それは膝丸様の悲しみの形。

泣いている私に気づいた彼は
困惑な表情となって、ぱっと手を離す。
私の反応が意外だったのかも知れない。









『すみません…………』


膝丸「…………いや、君は優しいな。

そんな君の心に俺は気づかず、
挙げ句の果てには君に害を及ぼしてしまった。
だが君が心痛する必要はないのだぞ?」


『………………』









私の様子を伺いながら、彼はそう言ってくれた。
この人は何も悪くない。悪いのは人だ。
人は間違いを侵してしまう生き物だ。
弱い弱い人の心が、彼らを苦しめてしまった。

†佰参拾壱†→←†佰弐拾玖†



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冷泉 雪桜(プロフ) - tomo10260403さん» コメントどうもありがとうございます!薄桜鬼も読んでくださって……感謝でしかないですね!これからもよろしくお願いいたします (2019年9月17日 12時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
tomo10260403(プロフ) - 冷泉 雪桜さまの作る作品の虜になりました!薄桜鬼も刀剣乱舞も一気に読んでしまって、小説を読むのが苦手なほうなのですが、のめり込むようにするすると入ってくる文章に、夢中です! (2019年9月16日 17時) (レス) id: f4aa91fff9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2019年9月6日 1時

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