†陸拾陸† “居ない助手” ページ27
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『…………今回も、駄目だったかぁ』
私ははぁ、と肩を落とした。
私の髪から雫がパタパタと落ちる。
そして味噌汁臭い。
先程、和泉守様がいる手入れ部屋に行ったのだが、
以前と同じく頭から味噌汁ぶっかけられた。
うん、分かっていたけどさ。
今回は全力で逃げてきたよ。
今度こそ殺されるかと思ったし…………
どうしよう。埒が明かないぞ。
堀川様の願い事、叶えられない以前に、
接触も難しいとなると。
“か、兼さんがごめんね?
本当はあんな事する人じゃないんだ”
『(分かってますよ。慣れてます)』
“…………君は、辛い経験をしてきたようだね”
『(え?)』
“わざとではないんですけど、
自然と君の記憶が時々流れてきて…………
その、ごめん”
『(…………嗚呼成る程)』
堀川様は私に憑依することに馴染んできて、
私の過去が時々流れてくるらしい。
正直その記憶はあまりいいものではないし、
前任と似たような光景を見ていると言う事だから、
逆に申し訳無くなってくる。
『(私も、堀川様の過去を見ますよ。お互い様です)』
そう、私もここ数日彼の記憶を見ることがある。
刀剣だった頃、ずっと共にいた主人が
銃に撃たれて死んでしまった事。
そして、付喪神として顕現した時、
人の体を得て嬉しかった事。
和泉守様が顕現され、再会出来た事。
一部始終だけだが、そんな場面をよく見る。
…………ただ、気がかりなのは、
堀川様が折れてしまったあの記憶は、
彼の刀身に触れて以来見ることが出来ていない。
まるで…………拒んでいるような。
『(しかし、参った…………
次行ったら多分死ぬよ私)』
“なら、僕に任せてくれないかな”
『(…………ん??)』
え、何か嫌な予感しかしない。←
___________
ドタドタドタドタ…………!!
スパンッ!!!!!
『“兼さん!人に向かって
味噌汁かけたら駄目だよっ!!!”』
“(えええっ…………!?)”
え、何か強行突破じゃないか!?
何が“任せてくれないかな”だ。
私もう死亡決定じゃんか!
自分の声で、自分の体でそんな大胆な行動をする“私”
ええ。乗っ取られましたよ!堀川様に!!
手入れ部屋に来た“私”は
勢いよく襖を開けて、元気よくそんな事を言い出す。
私そんなキャラじゃないし、と言うか
堀川様全開じゃないか!
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冷泉 雪桜(プロフ) - ブドウ農家の一人っ子さん» 薄桜鬼からすっとんで来てくれてありがとうございます!薄桜鬼の方がネタ切れになって中々進めれる事が出来ませんが、これからもよろしくお願いします! (2019年8月28日 12時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
ブドウ農家の一人っ子 - 薄桜鬼のほうからとんできて一気読みしました・・・冷泉さんの作品は控えめに言ってどれも神ですね(語彙力の喪失) これからも応援しています!! (2019年8月27日 20時) (レス) id: 70ec3f117a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2019年8月20日 1時