捌拾玖 ページ10
燭台切side
チリン………
どこからか鈴の音がした。
誰かの手を引いて………
何かから逃げるように走っている。
手は暖かい。その手を掴んで僕は走っている。
“もう少しだから”とか、
“大丈夫、生き延びよう”とか。
誰かを守るような言動を、僕が言っている。
でも迫りくる“ソレ”からは逃げれなくて、
ジワジワと僕と誰かを襲いかかってくる。
時折振り返っては手を繋いでいる子に
声をかける僕だけど、不思議と顔は見えない。
そこで“嗚呼、これは夢なんだ”と
頭の中では分かっていた。
それでも何かからか逃げるように
走る足は止まることはない。
“逃げなくてはいけない”と衝動的に
そう思っていたからだ。
何でだろ。多分手を引いている子は
守るべき主人ではない筈。
なら“コレ”は誰？
僕は何で必死になってコレを
守ろうとしているんだろ。
そして、最期には必ず僕が死んで、
守っていたその子も死ぬ。
そんな光景を何度も味わうように繰り返す夢を見た。
“みつ、ただ………”
死ぬ時は決まってその子が僕に向かって
這いずりながら、手を伸ばしながら………
弱々しく僕を呼ぶんだ。
泣きながら必ず………目の前で絶命する。
辺りは炎が見える。
嗚呼、燃える。僕が燃える。
また燃えるのか。今度こそ、消滅するのかな。
そんな事をぼんやりと考えながら死んでいく夢。
…………チリン
夢の最期は、必ず鈴の音と火が見えた。
───────────────
??「──う、光坊起きろ」
燭台「！！」
目が覚めた。酷い夢を見た。
目覚めが悪い………
視界には鶴さんが心配そうに
僕の顔を覗き込んでいた。
状態を起こして周りを見渡す。
どうやら檻の中みたいだ。
………そうだった。捕まったんだったっけ。
眠り薬をかがされて、動かなくなって、
あの悪夢を繰り返し見ていたのか。
鶴丸「大丈夫かい？顔色最悪だぞ」
燭台「…………嫌な夢を見てね」
鶴丸「そうか、あの薬のせいか？」
燭台「多分ね………」
本っ当………最悪な夢を見せられたな。
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年7月21日 18時
