玖拾肆 ページ15
Aside
『ああぁああっ！？
ひぐ、う、ぁぁあああ！！！』
腕をもがれた。体に杭を打たれた。
血で体が赤く染まる。
痛い。痛い。
痛みが体を巡り、叫ぶ事で痛みを和らげる術がない。
兄さん達が捕まった。うちのせいで捕まった。
この世界の住人は狂っとる。
得にこの都の住人は娯楽に忠実。
苦しむ声を娯楽として、互いを殺し合う程や。
だからこの都では祭りが行われる。
娯楽の為に、都の頭領は大舞台を作り上げた。
その祭りの始まりの幕引きがこの“見世物”。
現世からかっ攫った人間や小物の妖怪、名も無き神。
痛めつけ、殺さず、祭りを盛り上げる為に
その悲痛な叫びを合図として客を呼ぶ。
………その光景を見るだけだったうちが、
今度は自分が見世物なるとは思わへんかった。
『がは、ぁ………ﾌｩﾌｩ……ｯ』
朝霧《………お前、再生持ちか。
ｸｸｯ珍しい。どうだ？痛みに耐えるのは辛いか？
生き地獄を味わう気分はどーだ？
もっと見せな、顔を歪ませて、
会場を盛り上げろ》
『ぁ、ぐ………ぁあ………』
頭を押さえつけられた。
もう、何度叫んだ？喉が痛い。
けど………兄さん達を巻き込んだんはうちや。
ここで、死なせてしまったら………
そう考えるだけであの光景がちらつく。
大切な人が死ぬ姿を、
幾度も、幾度も……目の当たりにしてきた。
沢山の大切な仲間を死なせて来た。
それに比べれば………
…………自分なんぞの身で、守れるんやったら。
嗚呼、うちも狂っとるな。
『………ﾌ､ﾌｯ……』
朝霧《？》
『絶、望………な、んて…………ﾌﾌｯ、小さい……な。
見、飽きとった……よ。
これ、くらい、じゃ……うちは、
………効か、へんで？？』
朝霧《(………こいつ)》
『どうした、ん？ｹﾎｯ………
ﾌﾌﾌｯほら、傷が塞がり始めちゃったやん。
うちはタフやで？三振り分やろ。
ちゃんとやらへんと、その首飛ぶんやない？』
朝霧《(なん、だ、こいつは………
これ程の再生能力なんて、
三大都の頭領じゃあるまいに………)》
『はよせんと、会場を火の海にするで。
兄さんらに手ぇ出したら、許さんとこやったけど、
うちにしては大人しくしてやっとるんよ。
最悪の絶叫が、お望みやったら………な？』
必ず守るから。
絶対に、守るから。
今度こそ………“彼”のようには。
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年7月21日 18時
