漆拾陸 +物の語り手+弐 ページ37
七緒side
風化が進み、廃墟と化してしまった本丸。
それはかつて俺の妹がいた本丸だった。
妹の本丸は優秀な功績を残していた。
ブラックになった訳でもないはず。
しかし、彼女は忽然と消えてしまった。
俺は家の当主として時間を割くこともできず、
彼女の本丸でさえ探し出すのにも
3年かかってしまったのだ。
そして今、俺はその廃墟と化した
本丸に立ち入っている。
妹を探すために。
───────────────
蜂須「太鼓鐘、そちらはどうだい？」
太鼓「駄目だー蜂須賀ぁー！何もねー」
蜂須「困ったな………まさかここまで広いとは」
七緒「俺の本丸の倍くらいかな……」
蜂須「僕らの本丸も十分広いよ。
君は無駄に広さを求めてなかったろう」
七緒「優しいあの子の事たからね……
短刀達が走れ回れるようにしたのかもしれたい」
太鼓「これを期にうちも広くしよーぜ？」
蜂須「土地だけだよ」
そんな微笑ましい会話を聞きながら、
俺と二振りは広間を探索していた。
………が、ここは何があったのか、
床が抜け、柱に刀傷。
襖は見事に折れてひしゃげていた。
七緒「………」
蜂須「この痕跡、どう見ても………」
太鼓「！………あ、あれじゃね？
ここは広間じゃなくて室内戦の
模擬訓練的な場所じゃねぇか？」
蜂須「(フォローにしては
ちょっと無理あるよ太鼓………)」
太鼓「(やべぇ、いい感じに
フォロー出来てなかった………
言い分が苦しい………)」
七緒「(本当にいい子達だなぁ………)
そうかもね。最近はあの池田屋で
時間遡行軍の動きが活発だから。
今度うちでも取り入れようか」
気を使っての発言が何だか少し嬉しくて、
俺は太鼓鐘にそう言ってあげると、
彼はホッと胸を撫で下ろしていた。
七緒「(うん、やっぱり伊達の刀だね)」←ﾆｺﾆｺ
太鼓「(主の方が上手だった………)」←ｸﾔｼｲ
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年7月6日 12時
