漆拾弐 ページ33
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『ﾊ､ﾌ………ﾊｯ………ﾌｩ…………』
鶴丸「もう、大丈夫か？」
『………ごめん、取り乱してもうた。大丈夫』
鶴丸「きみがミシャクジ様を
あんな風に話す意味が分かった。
本当にあれは俺達を見て楽しんでいたようだった」
『そう言う神なんや………
ほんに、自分の娯楽の為に心を弄ぶ。
それがあのミシャクジ様。
容赦ないんよ。飽きたら一瞬で殺す』
鶴の兄さんのお陰で、何とか冷静さを取り戻せた。
けど、うちは気が気じゃなかった。
今までと、ちゃう。
前、うちがこの幽世から出る為に
逃げようとした時は見向きもせぇへんかったんに。
こんな田舎まで降りてくるなんて。
…………何としてでも、兄さん達を逃さんと。
死なせない………絶対に死なせない。
切国「…………それで、鶴丸と燭台切が
調べた結果は？」
燭台「鶴さんによればここは
幽世の世界は幾つものの世界に別れていて、
“地獄”もまたその中にある。
そして祟り神のミシャクジが統べるこの世界は
“罪人”が墜ちる世界。
推測からして僕達は何らかの“罪”を侵して
この世界に堕ちた。
………盲目するにはあまりにも信憑性がないから
確信はないけど………普通に考えて
それが妥当の理由だと思ってる」
鶴丸「俺達三振りに刻まれた数字。
それもまた関わりがあると俺は考えている。
それとミシャクジについて………
奴はこの世界にて“罪人を断罪する者”らしい。
現世に罪人が送り込まれないないよう、
“監視”し、罰を与える。
これだけ聞けば聞こえはいいが、
実際の奴を見たからな………
これは信仰によるまやかしに感じる」
切国「………罪人……俺達が…………」
鶴丸「光坊の言う通り、確信はない。
だが、可能性はある。
さてAよ。きみはこの世界の住人だろう。
きみはこの知識はあったかい」
すると鶴の兄さんはうちにそう言って来た。
その黄金色の瞳は少しだけの迷いと
疑いの感情が入り混じっとった。
これはしゃあない事やけど………
『知っとった。けど、正確には忘れとった』
燭台「忘れていた？」
『うちら妖魔は言ってしまえば
ミシャクジ様の支配下にある。
うちら妖魔の記憶の操作も、
あの神にとっては容易い事。
………そんな感じの信仰やった。
ただ、うちはミシャクジ様の正体を知っとったから。
でもホンマにあの神の社の場所は分からへん。
この幽世から出れた事なんかなかったから』
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年7月6日 12時
